特集
農作物に被害をもたらすダニには、ハダニ科、ヒメハダニ科、フシダニ科(サビダニ類)、ホコリダニ科、コナダニ科などのグループがあります。ダニは増殖能力の高さや薬剤抵抗性が発達しやすいことから、防除の難しい害虫です。この特集では、その中でも重要害虫であるハダニ科のハダニ類の生態と防除方法を紹介します。
○分類
●ハダニは昆虫ではない?
○生態
●広い加害作物
●寄生部位
●休眠する種、しない種
●強い繁殖力
○主な種類と加害作物
○農作物の被害
●注意:ハダニの被害と誤判断してしまう例
○薬剤使用上の注意点
●ハダニの発生源を絶つためのポイント
●薬剤使用上の注意点
○主なダニ剤の系統と特性
●主な化学合成農薬
●そのほかの防除資材(食品添加物由来、天敵)
ハダニは昆虫と思われるかもしれませんが、成虫は8本の脚を持っているのでクモの仲間に分類されます(昆虫は6本脚)。ダニとアブラムシやアオムシなどの害虫(昆虫)とは効果のある殺虫剤の成分も異なるため、ダニの防除にはダニ専用の殺虫剤(殺ダニ剤)の散布が必要です。
ハダニはほとんどの野菜・果樹に寄生します。寄生した植物の生育が悪化すると、餌となる別の植物を求めて移動するほか、風に乗って飛んだり、苗や人間等を介してハウス等に侵入します。
ナスの被害葉
イチゴの被害葉
キュウリの被害葉
リンゴの被害果
ハダニの多くは葉に寄生するほか、種類によっては果実にも寄生し、植物液を吸汁します。発生の初期は葉裏のくぼんだ部分や葉脈の隅にかたまっています。見回りの際は下葉の裏を注意深く見ることが大切です。
ハダニには休眠する性質があるものと、休眠性質を持っていないものがあります。休眠は卵か雌成虫の何れかで行います。カンザワハダニやナミハダニの黄緑色型は短日、低温条件下で休眠しますが、かつてニセナミハダニという名で別の種として分類されていたナミハダニの赤色型は休眠性を持っていません。
休眠性質を持つ
ナミハダニの黄緑色型
休眠性質を持たない
ナミハダニ(雌・成虫)の赤色型
ハダニのメスの多くは、1日に数個から10個ほど、一世代で100個程度の卵を産み、孵化した幼虫は3回脱皮して成虫となります。成長の期間は温度によって左右され、25℃ではわずか10日前後で卵から成虫になります。休眠しない赤色型のナミハダニやミカンハダニでは、気温が高ければ一年中増殖することも可能です。
ハダニは葉や花、種類によっては果実に寄生し、口針を差し込み植物液を吸収します。吸収された箇所は白色や褐色などの斑点になり、色が抜けます。ハダニは高密度になり、作物の状態が悪くなると分散のため、生長点部などに集まり、糸を吐くので植物体が糸で覆われます。
白斑状の食害痕が現れたバラの被害葉。
黄化して落葉し、生育不良となる
ハダニが吐く糸で覆われたキク
誤判断は適正な防除を遅らせ、時に致命的な被害になってしまいます。異常のある株は必ずハダニの発生を疑い、拡大鏡を使うなどしてハダニが生息していないかを確認することが大切です。
監修:元高知県農業技術センター 環境システム開発室 高井幹夫