診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
雌成虫は体長0.4〜0.5mmで赤色。卵以外の各発育態が葉や果実を吸汁加害する。被害葉は葉緑素が抜けて白い小斑点を多数生じる結果、葉全体が白っぽく見える。葉に多発すると旧葉の落下を助長し、樹の生育に悪影響を及ぼす。しかし、糖度などの果実品質への影響はほとんど見られない。果実は着色期前の緑色の時期に加害されると、葉と同様に白っぽくなるが、着色には影響がない。したがって、極早生品種で着色期前に出荷しない限り実害はない。しかし、着色期以降に発生すると果実は着色不良となり商品価値が著しく低下する。
カンキツの他にナシ、モモ、イヌツゲなどに寄生する。卵、幼虫、第一若虫、第二若虫の各発育態を経て成虫となる。卵から成虫までの発育期間は最適な気温では約2週間と短く、年12世代以上を繰り返す。休眠しないので、常に各発育態が混在し、冬季でも暖かい日には活動する。3月頃から増加し、5月~梅雨明け、9~10月に急増しやすい。7~8月の盛夏期は高温により増殖量がやや低下し、土着天敵の活動が活発になることから、ミカンハダニは減少する傾向にある。台風などの強風雨により密度は低下するが、通常の雨ではそれほど減少しない。樹上での密度が高まると風に乗って分散し、隣接するカンキツ園に移動する。
越冬量が多い場合は冬季~4月にマシン油(アタックオイル、ハーベストオイルなど)を散布する。ただし、1~2月の厳寒期の散布は落葉を助長し、樹体への影響が強いことから控える。夏季は葉当たりの雌成虫3~4頭を目安に登録薬剤の散布を行うが、土着天敵の発生が見られる場合は、この時期の防除を省く。慣行防除園における土着天敵の発生は園地ごとに異なり、ミヤコカブリダニが主体の園地と捕食性昆虫類(キアシクロヒメテントウ、ケシハネカクシなど)が主体の園地とに分かれる傾向がある。土着天敵の発生種を確認した上で、影響が小さい殺虫剤を選択することにより、ミカンハダニの多発を回避することができる。ミヤコカブリダニは一部の殺虫剤・殺ダニ剤を除き、各種農薬による影響を受けにくい。しかし、捕食性昆虫類は影響を受けやすいので、殺虫剤の選択に注意が必要である。着色期にあたる秋季には天敵類の活動はあまり期待できないので、必ず殺ダニ剤を散布し、果実の被害を防ぐ。ミカンハダニは薬剤抵抗性を獲得しやすいので、同一系統の殺ダニ剤の連用は避ける。
カネマイト、コロマイト、スターマイト、ダニエモン、ダニゲッター、ダニコング、ダニサラバ、バロック、マイトコーネ、マシン油など。
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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