2015-07-15 最終更新
病徴:
果実に赤色斑点および斑入り,茎・葉に赤色輪点および不定形の赤色斑点を示す.果実の病徴は果実成熟期の6~7月頃,葉の病徴は果実収穫の終わった8~9月頃,茎の病徴は春に顕著に観察される.アメリカでは,うどんこ病菌によって葉に赤色斑点が形成されることがあり,その場合,葉の裏面の同じ位置に黒色斑点が形成される.一方,本病による葉の赤色斑点は,葉の裏面に斑点は形成されずきれいである.病徴の程度は,品種,環境条件により異なるが,アメリカミシガン州での試験では,本病により果実収量が25%減少すると算出されている.ラビットアイブルーベリーは免疫性あるいは抵抗性であるが,ハイブッシュブルーベリーは感受性の品種が多い.北部ハイブッシュブルーベリー品種であるウェイマウス・ブルーレイ・ブルータ・バーリントン・カボット・コビル・ダロウ・アーリーブルー・ルーベル・シエラ・デュークは病徴発現する.一方,北部ハイブッシュブルーベリーのジャージーは免疫性,ブルークロップは強い抵抗性を示す.南部ハイブッシュブルーベリー品種のオーザックブルーは,果実の奇形を伴う激しい病徴が現れる.
病原:
ブルーベリー赤色輪点ウイルス Blueberry red ringspot virus(BRRV)
BRRVは,Caulimoviridae科Soymovirus属に所属する.ウイルス粒子は直径42~46 nmの球形で,44 kDaの外被タンパク質と8,803塩基対の二本鎖DNAゲノムから構成されている.塩化セシウム密度勾配遠心分離で,ウイルス粒子は1.3 g/cm3と1.4 g/cm3の浮遊密度をもつ2成分に分離するが,2成分中のウイルス粒子の形態的な差異はない.超薄切片の電子顕微鏡観察で,ウイルス粒子は核内および細胞質で観察される.通常,細胞質では,ウイルス粒子は封入体で観察される.BRRVの自然宿主植物はブルーベリーのほか,クランベリーがある.草本宿主植物は知られていない.
伝染:
BRRVは接ぎ木伝染性ウイルスで,汁液伝染せず,媒介生物(ベクター)は不明である.カイガラムシ(Dysmicoccus sp.)がベクターではないかと推測されているが,カイガラムシを用いたBRRVの伝搬試験は成功していない.
(2011.10.14 磯貝雅道)