2015-07-15 最終更新
病徴:
株全体にえそ斑紋を伴う激しい黄化や萎縮症状を呈し,開花後の花弁には奇形やカラーブレーキングがみられる.初期は感染葉にえそ斑紋が生じ,やがて全身感染する.冬季には病徴が容易に観察できるが,高温(27℃以上)で病徴がマスクされる.
病原:
Impatiens necrotic spot virus(INSV)
INSVは1990年にアメリカのインパチエンスからはじめて分離された.感染細胞中には,直径85~120nmの膜に包まれた球状粒子が観察される.INSVはトマト黄化えそ病の病原ウイルスであるTSWVと同じTospovirus属に属し,報告当初はTSWV-I(TSWV-インパチエンス系)とされていた.本ウイルスは多犯性で,被害はおもに施設栽培の花卉植物(インパチエンス,シクラメン,バーベナ,ダリア,トルコギキョウ等)で生じる.
伝染:
本ウイルスの伝搬は,きわめて高い媒介能力をもつミカンキイロアザミウマにより永続伝搬される.近年,媒介能力が低く,非効率的であるもののヒラズハナアザミウマも媒介種であることが確認された.種子伝染,土壌伝染はしない.本ウイルスは非常に不安定で,特に高温時には汁液接種を行っても感染しにくく,接触伝染が生じる可能性は低いと考えられる.
(2011.11.30 谷名光治)