2015-07-15 最終更新
ヤナギ,ポプラなどの林木に寄生する穿孔性害虫として知られていたが,徳島県の日本ナシで2001年ころから被害が発生し,その後,2008年に秋田県(日本ナシ),長野県(リンゴ),2009年に福島県(日本ナシ,リンゴ),山形県(リンゴ),2010年に宮城県,茨城県,千葉県(日本ナシ)でも被害が確認され,果樹での被害の報告が増えている.本州,四国(徳島県),九州,対馬に分布する.
形態:
成虫は開張約35~45mmで,灰褐色の前翅に不規則な黒線が複数ある.卵は球形で直径1mm弱,産卵直後は淡い黄色でのちに黄褐色となる.幼虫の体色は紅色~薔薇色で頭部は赤銅色,体長は孵化幼虫で約2.5mm,老熟幼虫で40~50mm程度.蛹は褐色で,大きさは20~25mm程度.
加害作物:
【果樹】ニホンナシ,リンゴ.
被害:
幼虫が集団で穿孔食害し,枝幹の衰弱や枯死を招く.
被害は直径2cm程度の枝から直径10cmを超える幹部まで見られ,中心部の木質部まで縦横に穿孔食害するのが特徴である.寄生された枝幹部では木屑の排出がみられ,しばしば樹液の滲出も伴い,発酵したような異臭が発生する.
日本ナシでの発生は“幸水”に多く,“豊水”にはあまり見られない.
生態:
羽化の時期は6~8月で,7月が盛期である.成虫の寿命は室内の観察例では交尾した個体で3~5日程度である.交尾および産卵は羽化当夜に可能とされる.卵は枝の裂傷部,樹皮の割れ目や剪定切り口に枯れ込みでできた樹皮の剥離部などの隙間に20~200個程度の塊で産下される.卵期間は25℃で17日程度である.孵化後,細かな木屑を出しながら食入する.幼虫期間は2年を要するとされる.蛹は6月から見られ,枝幹内で繭を形成し,蛹化する.蛹期間は25℃では20日程度.羽化後,コスカシバのように樹上に半身を出した状態で蛹殻が残る.
(2011.10.11 中西友章)