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シイノコキクイムシ

Xylosandrus compactus (Eichhoff)

英名:castanopsis ambrosia beetle,black twig borer

コウチュウ目キクイムシ科

2015-07-15 最終更新

チャの枝枯れ被害を起こすことが知られてきたが,多くの樹木などの枝に穿孔し内部で菌を培養して繁殖する養菌性キクイムシである.近年,関東地域では街路樹や公園に植栽されているハナミズキの枝先が枯死する被害が目立っている.本州,四国,九州,沖縄,小笠原,国外では中国,台湾,東南アジア,インド,アフリカ,米国などに分布.

形態:
雌成虫は体長1.5~2.0mmの黒~茶褐色で円筒形.胸部が隆起し丸みを帯び,尾端は丸く,まばらに白毛をもつ.幼虫は無脚で乳白色,頭部は黄褐色.

加害作物:
【特用作物】サンショウ,チャ
【果樹】オリーブ,カキ
【庭木】アジサイ,カシ類,キングサリ,クスノキ,ゲッケイジュ,サカキ,ナンテン,ハナミズキ,ヤマザクラなど.

被害と生態:
養菌性キクイムシの一種.熱帯や亜熱帯に生息し,広範囲な宿主範囲をもつ.成虫で越冬し,5~6月ころに越冬成虫による繁殖が始まり,夏~秋にかけて2回ほど発生を繰り返す.ハナミズキでは,おもに幹径5~15mmの枝に穿孔するが,12mm前後の細枝に多い.穿孔部位は枝の先端部から50cmほどの部位であることが多いが,そこから上位部分は枯死する.枝枯れは,坑道が形成されたことにより,維管束が損傷を受けて養水分の供給が妨げられ,枯死したものと考えられる.この穿孔口は直径0.5~1.0mmの円形で,中に成虫がいる場合,細かい白色の木屑が出ている.穿孔した雌成虫は枝の中心部に孔道を作り,アンブロシア菌の胞子を接種して培養し,産卵を行う.ハナミズキでは1つの孔道で幼虫が10~20頭発生することが多い.孵化した幼虫は,そのアンブロシア菌の菌糸を食べて発育する.雌成虫は幼虫が成長するまで坑道内に留まり清掃などを行う.新成虫は食物である寄生菌をもって,坑道から脱出する.一般にキクイムシ類は二次性害虫で衰弱樹に穿孔するといわれるが,本種のハナミズキ被害は健全樹で発生しており,幼木の生産圃場でも問題となっている.
近縁種には近年暖地や北陸地方でカシ,ナラ,シイの枯死を起こす原因であるカシノナガキクイムシがいる.
(2011.10.16 竹内浩二)

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シイノコキクイムシ成虫(竹内浩二)

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アンブロシア菌糸が生えている孔道とシイノコキクイムシ幼虫および雌成虫(ハナミズキ枝)(竹内浩二)

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シイノコキクイムシによるハナミズキの枝の穿孔口(竹内浩二)

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シイノコキクイムシによるハナミズキの枝枯れ被害(竹内浩二)