診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
幼虫が葉を食害する。幼虫は多食性で、5~12月にキャベツ、ハクサイなどのアブラナ科植物のほか、多くの作物を加害する。
キャベツ、ハクサイ、ナス、ネギ、オクラ、イチゴ、ピーマン、レタス、インゲンマメ、ダイズ、サトイモなどの葉を加害する。
成虫の前翅は暗褐色で中央部に斜めに走る淡褐色条紋がある。ハスモンとはこの斜め条紋に由来する。1~3齢幼虫は灰色、4齢期以降は頭部後方の胴部に1対の黒紋が目立つ。成熟幼虫は40~50㎜の大きさになり、体色は灰色、暗褐色、暗緑色と変異に富む。 暖地系ヤガ類でアジア南部に分布する。国内では全国に分布する。野外での越冬は暖地で確認されている。国内の南岸線以南では幼虫態で越冬する。春先、発生密度は低いが世代を重ねるにつれ密度を高め、9~10月には多発状態になる。猛暑の年に多発する傾向にある。1960年代以降に多発が目立つようになったのは施設栽培が増え、施設内が越冬場所になったと見る向きもある。雌成虫は葉裏に卵を数層に積み重ね卵塊に産付する。卵塊内の卵粒数は数百卵になりその表面は黄褐色の鱗毛で覆う。幼虫は6齢を経過し、土中の浅いところで蛹化する。蛹は赤褐色。晩秋の世代が越冬する。休眠しない。
夏季サトイモやダイズに卵塊や幼虫が多発しているか否かを見て多発予察の基本にする。夏秋作物に幼虫の発生が目立ったら、9~10月のキャベツ、ハクサイの定植時薬剤処理を行う。その後卵塊や若齢幼虫の調査を行い、発生が多いようであったら本圃でも防除する。
防除薬剤には有機リン系(エルサン:かぶ・カリフラワー・キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー)、IGR(昆虫成長制御剤)系(アタブロン:キャベツ・だいこん・はくさい;カスケード:キャベツ・なばな類・ブロッコリー;ロムダン:キャベツ・はくさい)、ピレスロイド系(トレボン:キャベツ;マブリック:キャベツ・だいこん)、カーバメート系(ランネート:キャベツ・だいこん)、ジアミド系(プレバソン:カリフラワー・キャベツ・なばな・はくさい・ブロッコリー;ベリマーク:カリフラワー・キャベツ・ブロッコリー・はくさい;ベネビア・ヨーバル:キャベツ・はくさい・ブロッコリー)、スピノシン系(デイアナ:かぶ・カリフラワー・キャベツ・こまつな・チンゲンサイ・なばな・はくさい・ブロッコリー・非結球アブラナ科葉菜類)、マクロライド(アファーム:キャベツ・ブロッコリー・なばな類・非結球アブラナ科葉菜類;アニキ:カリフラワー・キャベツ・はくさい・ブロッコリー・非結球アブラナ科)、トルネード(キャベツ)、BT剤(野菜類)、ピロール系(コテツ:キャベツ・ブロッコリー、非結球メキャベツ)、ピリダリル(プレオ;キャベツ・ブロッコリー)、グレーシア:カリフラワー・キャベツ・はくさい・ブロッコリー)、など309剤が登録されている。大発生が予測されるときには、地域の指導機関やJAが推奨する効果のある薬剤を選定し、使用基準を守り施用する。
(平井一男)
※掲載している薬剤(農薬)は
2020年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)
・殺虫剤(IRAC、2016年4月版 ver.8.1) *PDFデータ
・殺菌剤(FRAC、2017年4月版) *PDFデータ
・除草剤(HRAC、 2016年9月版 *Excelデータ
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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