診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
幼虫は日中、土の中や株元に潜み、夜間になると地際部の茎をかじり、葉や茎を引き込みながら食害する。若齢幼虫は葉を食害するが、成熟幼虫は土中に潜り、夜間に発芽直後の幼茎や定植苗をかじり倒し、大きな被害を及ぼすこともある。ネキリムシ類にはカブラヤガ、タマナヤガ、センモンヤガ、オオカブラヤガが含まれるが、カブラヤガとタマナヤガは、ネキリムシ類の代表2種である。
アブラナ科では、キャベツやブロッコリーなどの定植苗や、ダイコンが発芽した直後に被害が発生する。きわめて雑食性で各種野菜類、花卉類(キク、グラジオラス他)などで被害が発生する。他にマメ科、イネ科、タデ科、ナス科、サトイモ科、アオイ科、ショウガ科、シソ科、セリ科、バラ科、アカザ科、キク科、ユリ科、ネギ科、ウリ科、ヒルガオ科などが加害される。
カブラヤガの成虫前翅長は約23㎜で、丸く黒く縁取られた腎状紋が目立つ、タマナヤガはやや大きく約45㎜で、前翅の腎状紋外側の黒すじが目立つ。幼虫は暗灰褐色、40~45㎜になる。若齢幼虫は淡緑色、成長すると淡褐色や灰黄色などになるが、変異は大きい。タマナヤガの幼虫の体表はカブラヤガに比べ光沢に欠け、サメ肌状である。 幼虫は若齢期を除いて植物体上に留まらず、土中などに潜む。夜間に活動し、移動しながら次々に株を倒すので、発生数が少なくても被害が大きくなる。カブラヤガは年3~4回発生を繰り返し、幼虫態で越冬する。カブラヤガは夏にやや多くなるが、タマナヤガは1年を通して個体数の変動は少なく、年に4~5回発生を繰り返し、春と秋にやや多く発生する。どちらの発生も、猛暑の年には多くなる傾向がある。北日本では突発性の移動侵入昆虫とされている。両種とも土中で蛹化する。 国内での分布はほぼ同様で、北海道、本州、四国、九州、沖縄諸島などに生息し、同時に混発することもまれではないが、発生はカブラヤガの方が多い。国外では朝鮮半島、中国、樺太、朝鮮半島、中国、台湾、インド、オーストラリアに分布する。
株が急に萎凋したり、倒れるなどの被害が見られたら、株元がかじられていないかを確認し、株元や周囲の土を掘って幼虫を探して捕殺する。各種雑草が発生源や隠れ場所となっているので、除草するとともに、周辺の雑草地から幼虫が侵入しないように注意する(除草のタイミングによっては作物への移動を助長することがある)。ダイコンの播種時やキャベツなどの移植苗の定植時に粒剤を施用すると省力的である。 フェロモントラップにより、発生予察が可能で、地域の病害虫防除所などが提供する発生情報を入手して発生状況を把握する。
ネキリムシ類防除用には有機リン系(ダイアジノン粒剤5:キャベツ・ブロッコリー・ハクサイ・カブ・ダイコン・非結球あぶらな科葉菜類・コマツナ、オルトラン粒剤:キャベツ・ハクサイ・ブロッコリー)、合成ピレスロイド系(フォース粒剤:キャベツ・ハクサイ・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類)、クロルピクリン系、カーバメート系(デナポン5%ベイト:キャベツ・ハクサイ・ダイコン)、ジアミド系、ネオニコチノイド系(ダントツ粒剤:キャベツ・ハクサイ))など約240剤が登録されている。常発地域では近くの指導機関やJAが推奨する効果の高い薬剤を選定し、播種時や定植時に使用基準を守り全面土壌混和、株元散布、地表面散布などを心がける。
(竹内浩二・平井一男)
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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