診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
被害は大規模産地や家庭菜園のキャベツ、ダイコン、ブロッコリー、ナバナ、ハクサイなどにみられ防除対象の主要害虫になっている。幼虫が葉裏から葉表の表皮を残して食害するので透けて見える。被害は春と秋に多い。
キャベツ、ハクサイ、ブロッコリー、ダイコン、コマツナ、ナバナなど。
成虫は体長約6㎜、前翅長6~7.5㎜。雌の体色は灰褐色系で背中(前翅)の菱形は不明瞭、雄成虫は黒褐色系で背中(前翅)に明瞭な黄白斑の菱形がある。この菱形が英名のDiamondback mothの由来になっている。卵は長径が約0.5㎜の楕円形、産付直後は淡黄色であるが、ふ化間近には黒化する。幼虫はやや紡錘形で成長すると体長約10㎜となる。若齢のうちは鮮やかな緑色であるが、発育につれ濃緑色~緑褐色になる。蛹は長さ約6㎜で緑色、淡褐色、黒色など変異がある。蛹化は主に葉裏の繭内で行われる。 原産地は西アジアとされ、現在は熱帯から寒帯まで全世界的に分布する。国内では北海道でも被害が出るが、野外の越冬は根雪のない東北地方中部までとされている。越冬態は、寒冷地では蛹、暖地では蛹や幼虫や成虫で、冬も成長し続ける。コナガの成長は早く、年発生回数は寒冷地で約5回、暖地では10回以上に及ぶ。
成虫の飛び込みと集中産卵、そして雑草が繁茂している圃場に幼虫が多発しやすく被害が誘発されやすい。このような状況を事前に察知し防除要否を検討する。
コナガの防除薬剤は941剤が登録されているので、適用野菜を確かめ適期に使用する。主な製剤と適用野菜は以下の通りである。
・有機リン系(1.エルサン:かぶ・カリフラワー・キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー;2.サ
イアノックス:かぶ・キャベツ・だいこん・はくさい;3.ダイアジノン:カリフラワー・キャベツ・ブロッコリー; 4. トクチオン:キャベツ;5.オルトラン:キャベツ・はくさい・だいこん)。
・ピレスロイド系(1.アデイオン:カリフラワー・キャベツ・だいこん・なばな・はくさい・ブロッコリー
ー;2.トレボン:キャベツ・だいこん・はくさい;3.アグロスリン:キャベツ・だいこん・はくさい・はつかだいこん)。
・ネオニコチノイド系(1.アクタラ:キャベツ・はくさい・ブロッコリー;2.ダントツ:キャベツ・ブロッコリー・はくさい;3.スタークル(アルバリン):キャベツ・はくさい・ブロッコリー;4.モスピラン:カリフラワー・キャベツ・だいこん・チンゲンサイ・はくさい・ブロッコリー・わさびだいこん・非結球あぶらな科葉菜類)。
・ジアミド系(1.プレバソン:かぶ・カリフラワー・キャベツ・だいこん・はくさい・はつかだいこん・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類;2.ベネビア:キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー;3.ベリマーク:キャベツ・カリフラワー・だいこん・はくさい・ブロッコリー;4.フェニックス:キャベツ・メキャベツ・はくさい・カリフラワー・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類・チンゲンサイ・かぶ・だいこん・はつかだいこん・わさびだいこん;5.プリロッソ:キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー;6.ヨーバル:キャベツ・はくさい・ブロッコリー・非結球アブラナ科野菜)。
・IGR(昆虫成長制御剤、1.アタブロン:キャベツ・だいこん・カリフラワー・ブロッコリー・はくさい;2.カスケード:キャベツ・はくさい・だいこん・はつかだいこん・非結球あぶらな科葉菜類・ブロッコリー)など。
・ピロール系(1.コテツ:かぶ・カリフラワー・キャベツ・こまつな・だいこん・チンゲンサイ・はくさい・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類)。
・ネライストキシン系(1.パダン:キャベツ・だいこん・チンゲンサイ・なばな・はくさい・はつかだいこん・ブロッコリー)。
・スピノシン系(1.デイアナ:かぶ・カリフラワー・キャベツ・こまつな・だいこん・はくさい・ブロッコリー・なばな類・チンゲンサイ・非結球あぶらな科葉菜類;2.スピノエース:カリフラワー、キャベツ・だいこん・はくさい・はつかだいこん・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類)。
・BT剤(エスマルク、トアロー、クオーク、サブリナ、ゼンターリ、チューリサイド、チューンアップ、デルフィンなど:野菜類)。
・マクロライド系(1.アニキ:かぶ・カリフラワー・キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類;2.アファーム:かぶ・カリフラワー・キャベツ・こまつな・だいこん・チンゲンサイ・なばな類・のざわな・はくさい・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類)。
・インドキサカルブ系(トルネード:キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー)。
・フィプロニル系(プリンス:カリフラワー・キャベツ・チンゲンサイ・はくさい・ブロッコリー)。
・ピリダリル系(プレオ:カリフラワー・キャベツ・こまつな・だいこん・なばな類・はくさい・ブロッコリー・非結球あぶらな科葉菜類)。
・ミトコンドリア電子伝達系阻害剤(ハチハチ:かぶ・カリフラワー・キャベツ・だいこん・はくさい・ブロッコリー)。
・フロメトキシ系(ファインセーブ:はくさい・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・だいこん)。
・ブロフラニリド系(ブロフレア:かぶ・キャベツ・だいこん・はくさい・非結球あぶらな科葉菜類)。
・スピロテトラマト系(モベント:キャベツ・ブロッコリー)などの登録薬剤がある。
コナガは難防除害虫として知られているので、発生初期に効果の高い薬剤を処理することが基本とされている。地域によっては薬剤の効果が低下していることがあり、防除指導機関やJAなどが推奨する有効薬剤を選び、播種時や定植時に処理する。また生育期に成虫の飛び込みがあったら、薬剤散布を行う。成虫の交信かく乱剤(性フェロモン剤)もある。
(平井一男)
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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