診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
成虫および幼虫が伸長途上の葉の表面を舐めるように食害する。食害痕はかすり状の白斑となり、多発すると葉全体が白化し、生育抑制や枯死を引き起こす。このため、緑色部を出荷する葉ネギの場合には、本種の加害を受けると商品価値が著しく損なわれる。一方根深ネギは軟白部に緑色部の一部のみを付けて出荷されることが多いため、出荷直前に新葉への寄生が少なければ、育苗期の加害による生育の遅れを除くと比較的影響が少ない。このほか、花球(ネギ坊主)にも寄生し結実障害を発生させるため、採種ほ場では採取歩合の低下が問題となることもある。また本種は重要な植物ウイルスであるTSWVおよびIYSVの媒介者であり、ネギ類では本種のIYSV媒介によるえそ条斑病の発生も問題となる。
ネギ(ワケネギを含む)、アサツキなどのネギ属作物、その他多くの植物を加害する。
ネギには数種類のアザミウマが寄生するが、ネギアザミウマがもっとも多く、大きな被害をもたらす。雌成虫の体長は1.1~1.6mmで、体色は淡黄色から黒褐色まで変異が大きく、一般に夏季は淡色系、冬季は暗色系の個体が多い。本種は日本をはじめ全世界に広く分布し、農作物を加害するアザミウマ類の中でも特に重要視される種の一つである。発育零点は10.8℃であり、25℃では卵~羽化までを16~17日で経過する。非休眠性であり、主に成虫が植物上で越冬する(暖地では一部幼虫態でも越冬)。暖地では3月、温暖・寒冷地では6月頃から増加して盛夏に多発し、初冬まで活動する。暖地では年間約6世代、寒冷地では約3世代を繰り返し、1雌当たり平均約70個を産卵する。従来、日本では産雌単為生殖(未交尾の雌が雌を産卵)の系統のみが知られ、雄は発見されていなかったが、近年、産雄単為生殖系統(未交尾の雌が雄を産卵)の生息が確認され、最近は各地の圃場で本系統が優占するようになっている。
ネギでの本種の防除に利用可能な登録薬剤は多いが、高い防除効果が長期間持続するものは少なく、化学合成農薬のみによる防除は困難である。本種の寄主となるほ場周辺の雑草の防除や残渣の適正な処分などの耕種的防除法や、アザミウマ類に対する侵入防止効果が注目されている赤色防虫ネットなどの物理的防除法を積極的に取り入れる必要がある。また、減農薬管理を行うほ場では土着天敵も発生するため、植生管理などを活用してこれらを保護することによる生物的防除法の確立が期待される。
アクタラ、アグリメック、アドマイヤー、ウララ、コルト、グレーシア、スピノエース、ダントツ、ディアナ、ハチハチ、ファインセーブ、プレオ、ベストガード、ベネビア、モスピラン、ラディアントなど。アルバリン、スタークル、ヨーバル、アドマイヤーはかん注処理もできる。ベリマークはかん注処理できる。※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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