診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
雌成虫は葉面に点々と小さな穴をあけ、しみ出た汁液を摂食する。卵は葉肉内側の表面に付着させる形で産下され、孵化した幼虫は葉の内部に潜入して葉肉を食害する。従来系統の幼虫は白い不規則な線状の食害痕を発生させるが、2019年以降に国内各地で確認されている別系統の場合は、1葉あたりの幼虫数が多い傾向にあり、食害が進むと近接した食害痕が癒合し、幅広で面的に白化した症状を呈し、従来系統のものと異なって見える。幼苗期に多発すると枯死株を生じ、被害が大きい。また、緑色部を出荷する葉ネギでは、被害がわずかでも商品性が著しく損なわれる。本種幼虫とネギコガの食害痕はよく似るが、ネギコガのものは太く短く直線的であり、不規則な線状にはならない。
ネギ(ワケネギを含む)、アサツキなどのネギ属作物。
ネギ属の作物には数種のハモグリバエ類が寄生するが、ネギ属だけを寄主とするネギハモグリバエがもっとも多い。成虫の体長は約2mmであり、胸部と腹部が黒く、その他の部分は淡黄色である。同属の他種と形態がよく似るが、本種では黄色部分が淡く、小楯板が黒色であることから、肉眼で他種と区別できる。長楕円形で白色の卵から孵化した幼虫は、前述のように葉肉を食べて発育し、成熟幼虫は体長が約4mmに達する。成熟幼虫は葉から脱出し、地表または土中で体長約3mmの俵状の蛹となる。発育適温は20~25℃であり、25℃条件下では1世代を約20日で経過する。年間5~6回発生するとされ、春と秋に多発し、真夏と真冬は非常に少ない。土中において蛹で越冬する。なお、従来系統と別系統の外部形態に差異は認められず、両者の区別には遺伝子解析が必要である。
生育初期に加害されると、枯死だけでなく葉の奇形や発育遅延が生じることもあるため、早期発見と防除が重要である。定植時や土寄せ時に散布剤のかん注処理や粒剤処理を行うと効果的である。また、本種には寄生蜂などの土着天敵も多いため、減農薬や植生管理によりこれらを保護することも防除に有効である。
アクタラ、アグリメック、アファーム、コテツ、グレーシア、ダントツ、ディアナ、ファインセーブ、ベストガード、ベネビア、モスピラン、リーフガード、コルト、ラディアントなど。ヨーバルはかん注処理もできる。アルバリン、スタークル、ベリマークはかん注処理できる。※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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