診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
発病樹では新梢の伸びが悪く、新梢の発生数が減少する。葉は小型化し、葉色が淡くなる。木質化した新梢の表皮は赤みがかった色になり、新梢に花芽の着生が目立つようになる。発病樹は収穫前から葉の黄化や紅葉がみられ、早期落葉する。翌年にはさらに樹勢が弱まり、症状が進むと衰弱枯死する。成木では症状がみられてから枯死するまでに数年かかる場合も多いが、発病後に着果負担をかけ過ぎると1~2年で樹勢が著しく低下し、樹勢の回復が困難となる。若木の発病樹では成木に比べて急性的な症状となり、春季に降雨が少なく乾燥条件が続くと展葉直後に萎凋枯死することがある。発病樹の根を掘り返すと、根が腐敗し、表面に白色~灰色の菌糸が付着している。また、皮層下木質部表面には扇状に広がった菌糸束がみられる。
病原菌は多犯性であり、本病はナシ以外にもリンゴやブドウなどの果樹類や樹木類などに発生する。被害根の残渣上で生存していた病原菌の菌糸束が第一次伝染源であり、土壌中の未熟有機物を分解して腐生的に繁殖し、二次伝染を繰り返す。どのような土質の圃場でも発生が認められ、改植を繰り返した熟畑での被害が多い。
発生圃場では改植するまでに土壌くん蒸剤で土壌消毒を行い、植え穴に未熟有機物を大量に入れるのを避ける。苗木の根部を殺菌剤に浸漬処理し、根に付着した病原菌の本圃への持ち込みを防ぐ。また、苗木植付け時には植え穴周辺に殺菌剤の土壌灌注処理を行い、土壌中に残存した伝染源からの病原菌の感染を予防する。発病樹の治療は根を掘り上げ、白色菌糸が付着した腐敗根をできる限り除去し、殺菌剤を土壌灌注して埋め戻す。発病樹はできるだけ着果負担を軽くし、樹勢の回復をはかる。なお、発病樹に対する治療対策として、近年開発された小型給湯器を用いた50℃の温水処理も有効である。
土壌くん蒸:ガスタード/バスアミド。根部浸漬:トップジンM。土壌灌注:トップジンM、フロンサイド。※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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