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難防除雑草

診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。

ヤブガラシ

ヤブガラシ(Cayratia japonica)
ヒイラギヤブガラシ(Cayratia tenuifolia)
いずれもブドウ科

標準和名はヤブカラシ。北海道から南西諸島にいたる全国で荒れ地、空き地、林縁、土手の斜面などに普通にみられ、道端のフェンスなどにからみつきながら繁茂している姿をよくみかける。樹園地や林地などあまり耕起されない農地にも侵入し、作物を覆って枯らしてしまうやっかい者であり、再生力が強く、除草剤も効きにくいため、難防除雑草となっている。

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ヤブガラシ
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ヤブガラシ幼植物 ©全農教

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根と地下茎が伸び、その節々から地上に芽を出す ©全農教

ヤブガラシ
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葉の付け根から伸びる巻きヒゲでからみつく ©全農教

ヤブガラシ
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5枚ほどの小葉からなる複葉 ©全農教

ヤブガラシ
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道路脇に繁茂するヤブガラシ ©植調協会

ヤブガラシ
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ツツジを覆うヤブガラシ ©全農教

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ヤブガラシ(3倍体)の蕾 ©植調協会

ヤブガラシ
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紫黒色の実をつけた2倍体(西日本タイプ)のヤブガラシ ©植調協会

ヤブガラシ
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ヤブガラシの花 ©全農教


生態

主に地下茎によって繁殖する多年生雑草である。春に、長く横に伸びた地下茎のところどころから、赤紫色の新葉をつけた茎を地上に伸ばし、葉の付け根から伸びる巻きヒゲでフェンスやほかの植物にからみつきながら、急速に成長する。ヤブガラシの葉は5枚ほどの小葉からなる複葉で、茎は数mの長さに達し、7~8月頃に茎の途中に小さな花が房状に集まった花を咲かせ、晩秋には地上部が枯れる。
広い範囲にふつうにみられる3倍体のヤブガラシは結実しないが、近年になって、西日本を中心に分布し、結実するヤブガラシは2倍体であること、沖縄諸島に分布しているヤブガラシ類の大部分は別種のヒイラギヤブガラシ(Cayratia tenuifolia)であることが明らかになった。

防除

頻繁に耕起される圃場にはほとんど発生がみられないことからも、耕起作業が発生を抑制していることが推察されるが、切断された地下茎を地表に1日以上放置すると茎中の水分が減って萌芽できなくなること、また地下茎を土中25cmの深さに埋設すると出芽できなくなることから、耕起によって切断した地下茎を地表にさらしたり、地中深く埋め込んだりすることで発生量を減らすことができると考えられる。一方、耕起を行えない場所では、刈り取りや除草剤を使った防除が考えられるが、刈り取りについては地下茎からの速やかな再生がみられるため防除効果は低い。

薬剤(農薬)

【農耕地】
雑草の地下部まで枯らす性質を持つラウンドアップマックスロードを、多年生雑草対象の高めの薬量で用い、再生状況に合わせて茎葉散布を繰り返し散布することで、地下部からの萌芽を強く抑えることができる。ただし、グリホサート剤は非選択性除草剤で作物に飛散すると著しい薬害を生じるため、作物生育期には使いにくい。例えばサトウキビ畑なら2,4-Dアミン塩のような作物に安全な選択性除草剤を用いて、ヤブガラシの地上部を効率的に枯らすことが望ましい。
【農耕地以外】
緑地管理用の除草剤としては、2,4-Dアミン塩と同じ作用性を有しさらに土壌処理効果も合わせ持つザイトロンの効果が高いことが知られている。また抑草剤として使われるショートキープは、ヤブガラシなどの広葉雑草の地上部を枯らしつつ被陰力の高いイネ科雑草中心の植生に誘導することで、新たなヤブガラシの発生を抑える効果が期待できる。
(村岡哲郎)

※掲載している薬剤(農薬)は 2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。


■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)

■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。

農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)

RACコード(農薬の作用機構分類)

※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。

収録:防除ハンドブック「 難防除雑草

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