診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
アジア原産とされるが今や全世界の温帯から熱帯に広く分布する。日本でも全国に分布し、畑地、果樹園、日当たりの良い路傍、公園および空き地などに生育する。東北南部以南の畑では最も一般的な雑草であり、1株から生産される種子の数は77,000個にも及ぶこともある。
さまざまな夏作物の栽培現場で多発し、放任すれば著しい減収につながる場合もあるため、経済的に最も問題視される難防除雑草の一つである。
種子で繁殖する夏生の一年生雑草であり、成長が早く多けつ性で、発生から1か月あまりで次々に開花結実をはじめる。
種子の発芽適温は比較的高く(30~35℃)、夏作物の畑でも作付け時期の早い場合は他の雑草より遅れて発生する。地表から1 cmまでの浅い土壌から発生するものが多く、降雨の2、3日後に出芽しやすい。
日当たりの良い場所では茎が横にはい、節々から不定根を下して大きな株になる。草高は30~60cmほどになるが、日陰では分げつが少なく直立して2mに達することもある。
メヒシバの生長は暑い時期ほど速くなる。気温の低い春先は主稈の葉が1枚抽出するのに約5日を要するが、真夏には約2日と短くなる。出穂は日長の影響を受け、4月に発生した場合は12葉前後が止葉となって出穂するが、晩夏に発生したものは7~8葉が止葉となって出穂する短日植物である。
メヒシバの種子は湛水すると著しく発芽率が低下するため、田畑輪換によって耕種的に防除することもできる。湛水が難しい場合は鋤き込みや刈取りによる方法もあるが、覆土が不完全だったり、刈高が高いと再生しやすいため、除草剤を利用した防除が中心となる。特に開花、結実前に防除することで翌年の発生源を抑えられる。
近年海外では除草剤に対して抵抗性を示す系統も確認されはじめていることから、同じ除草剤を連用せずに作用機構が異なる剤の使用を意識する。メヒシバに効果がある除草剤は多く、製品ラベルの適用雑草に「一年生雑草」または「一年生イネ科雑草」の記載がある剤で防除することができる。
植付前の畑で耕起前に生育しているメヒシバに対しては、草枯らしMIC、サンフーロン液剤、ラウンドアップマックスロードなどのグリホサートを有効成分にもつ非選択性の茎葉処理型除草剤を全面処理するのが効果的である。散布水量の幅が広いが、水量に合わせて適切なノズルを使用する。
耕起後まだ作物が出芽する前であれば、トレファノサイド、ゴーゴーサン、ラッソー、デュアールゴールド、ボクサー、フィールドスターPなどの土壌処理型除草剤を全面処理し発生を抑制する。このような土壌処理剤は有効な成分の種類が比較的多く、単剤または混合剤として製品化されており、粒剤や乳剤など剤型も選ぶことができる。砕土、整地をていねいに行って適切に処理すれば発生防止する効果が1か月以上持続する。作物に薬害を及ぼさないためには種子が露出しないように覆土するなど注意も必要である。
作物の生育期の防除としては、イネ科作物(イネ、ムギ、トウモロコシなど)以外であれば、作物が生育していても既に発生しているメヒシバに対してホーネスト乳剤、セレクト乳剤、ワンサイドP乳剤、ナブ乳剤、ポルトフロアブルなどイネ科雑草用の茎葉処理型除草剤を全面処理することができる。ただし、作物が繁茂すると薬液が雑草にかかりにくかったり、メヒシバが大きくなると枯殺効果が劣るので、処理適期を逸しないように注意する必要がある。また、作物に残留しないように処理時の収穫前日数にも配慮が必要である。
(穂坂尚美)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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