診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
世界の強害雑草のトップにあげられている雑草で、熱帯や亜熱帯地方の畑地に広く分布している。わが国では東北以南の海岸の砂地、河原、樹園地、芝地、農道などに分布するが、暖地や沖縄では畑地にも発生する。刈り取りに耐性を示すので、ゴルフ場などの芝地で問題となっている。
種子でも繁殖できるが、一般には地下部の塊茎で繁殖する多年生雑草である。
春に気温が10~15℃になると塊茎から萌芽してくるが、萌芽の適温は30~35℃であり、生育には高温と光の強い条件を好むC4植物である。塊茎は土中0~6cm層に多く形成されるが、地下30cmからも萌芽できる。
最初、親塊茎の基部から出葉するが、葉が数枚出たところで、親株から数本の根茎を出し、その先端が地上に出葉する。子株の基部が肥大して新しい塊茎を形成すると同時に、そこから根茎が伸長して増殖を繰り返す。6月に植付けた塊茎は1か月後に4次塊茎、2か月後には6次塊茎を形成した例がある。それぞれの新塊茎から数本の根茎が出るので、その増殖がいかに旺盛かが分かる。1g前後の塊茎を4月に1個植付けると、新塊茎数は2か月後には6個程度であったが、4か月後には144個、7か月後には2,746個にも達したとされる。同じ試験で茎葉の繁茂は4か月後には1㎡の範囲であったが6か月後には4㎡となり、株数は1,168本に達した。
地上部の茎葉は刈り取りに対して強い耐性を示す。自然光下で生育した場合、毎週続けて9回地上部を切除しても、なお容易に茎葉が再生するばかりか、植付け21日後の4回目の切除時には新塊茎の形成が認められている。しかし、55%程度の遮光条件下では、毎週7回の切除で茎葉の再生は停止し、萌芽力を失ったとされる。
種子発生のものに対しては、耕起や一般の土壌処理剤で防除できる。塊茎から萌芽した株は地下で繋がっており、耕起などで切断されると萌芽が促進され、発生がより多くなってしまうので注意する。塊茎は乾燥に弱く、また、-5℃以下の低温で死滅するので、冬期に耕起して塊茎を地表面にさらせば死滅させることができる。また、草丈も30cm前後であり、遮光に弱いので、地上部を密に被覆できるソバやダイズのような作物を作付することも発生量を減らすには有効であるが、根絶は難しい。
使用できる除草剤は限定される。サトウキビ畑や飼料用トウモロコシ畑に発生した場合はハマスゲ3~5葉期に選択性茎葉処理剤のシャドーを全面散布する。
一般の畑作物や果樹園については、ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQなどグリホサート剤の50~100倍液を作物や果樹にかからないように散布して根絶をはかる。なお、同一の塊茎から萌芽した複数のシュート(茎とその上にできる多数の葉からなる単位)はどちらか一方に処理すれば、処理しないシュートも枯死するが、根茎で連結したシュートは一方に処理しても他方は枯死しないようである。
【芝地】
ゴルフ場など芝地では頻繁な刈り込みでも完全に防除できないので、除草剤の利用が一般的である。スルホニルウレア系除草剤であるシバゲン、インプール、アグリーン、グラッチェなどが有効である。
【畦畔・農道や家回りなど】
萌芽後、茎葉が出揃った時期に、ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサート剤の多年生雑草対象の薬量をていねいに散布して根絶をはかる。
(野口勝可)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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