診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
ツユクサは、日本全国の道端や水田の畦畔など比較的湿った場所に多くみられ、青く可憐な花を咲かせることから古くから日本人に親しまれてきたが、畑地や樹園地内にもしばしば発生し、除草剤が効きにくい難防除雑草としても知られている。
マルバツユクサは、ツユクサに比べて花の色が淡く、その名の通り葉先が丸い卵形をした葉をつけ、海外では熱帯・亜熱帯の畑地、樹園地、牧草地の強害雑草として知られている。日本では、もともと関東以西の海岸近くの耕地や道端に散見される程度であったが、近年では暖地の果樹園を中心に大発生する事例が多くみられている。
ツユクサおよびマルバツユクサは、ともに種子で繁殖する一年生雑草である。種子は硬実で休眠性を持つため、発生は春から夏にかけて長期間続く。ツユクサは土中10cm、マルバツユクサは5cmの深さからも出芽可能である。ツユクサ種子の寿命は長く、25年間地中に埋設した種子が10%以上の発芽率を保っていたという報告もある。両草種とも土壌水分の高い場所を好むが、マルバツユクサはツユクサよりも温暖な気候を好み、より乾燥した条件にも適応している。
両草種とも茎が地面を這う形で成長し、夏から秋にかけて茎の先端に青色の花を咲かせ、貝殻様の苞(ほう)の中に1~4個の種子を形成し、晩秋に枯れる。マルバツユクサは地上で花を咲かせる他に、地下にも閉鎖花をつけ、この中に発芽能力を有する種子を形成する。
ツユクサ類は地中深くから長期間にわたって発生してくるため、畑地で使用される一般的な土壌処理剤が効きにくい。また、地面をはう茎の各節から発根・再生する能力を持つため、刈り取りにも強い。さらに、近年、果樹園などで多用されているグリホサート剤に対しても耐性を持つため、他の雑草が枯れた後にツユクサ類が優占している場面をよくみかける。
【畑地】
畑作用除草剤の中で発生前から発生始期のツユクサに対して一定の効果があるものとして、ゲザプリム、ゲザガード50、センコル、ダイロン、ロロックス、ラクサー、フルミオWDGなどの土壌処理剤があげられるが、ツユクサ類は長期間にわたって発生してくるため、土壌処理剤の残効が切れた後に発生してきたものについては、バスタ、ザクサ、2,4-Dなどの茎葉処理剤を体系処理する必要がある。これらの薬剤はそれぞれ使用できる作物や薬量、使用時期などが決まっているため、ラベルをよく読んで適切に使用する必要がある。
【樹園地】
マルバツユクサについては、特に暖地のかんきつえん樹園地などでの発生が目立つが、このような場所ではラウンドアップマックスロードを6月と8月に反復処理することで地下の閉鎖花も含めた枯殺効果がみられ、翌年以降の発生量の減少が期待できる。また、バスタやザクサもマルバツユクサの地上部を枯らす効果が高いが、枯れ残った地下部からの再生や新たな種子からの発生がみられるため、多発圃場では年2~3回の防除が必要である。ただし、これに新たな発生を抑えるシンバーを同時施用することにより、少ない散布回数で防除できる可能性も示されている。また、カンキツ園で使用できるシンバーは、発生前から生育期のマルバツユクサに対し、高い除草効果を示すことが知られている。
(村岡哲郎)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)
・殺虫剤(IRAC)2022年6月版(ver.10.3) *PDFデータ
・殺菌剤(FRAC)2022年6月版 *PDFデータ
・除草剤(HRAC)2020年3月現在 *Excelデータ
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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