診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
北海道から沖縄まで広範囲に分布する。畑地、家の庭、道端、公園、空き地などいたるところで、秋から春にかけて普通に見られる小型の一年生雑草である。踏みつけや刈り込みに強く、秋から春までだらだらと発生し続け、さらに早春から長期間にわたって結実し続けるため、何度防除しても発生してくるやっかいな雑草となっている。
特にゴルフ場では、頻繁に刈り込みが行われるグリーン内にもその環境に適応した矮小型のスズメノカタビラが無数に発生して問題となっており、それらは種子だけではなく切断された切片からも再生し増殖していることが判ってきた。
種子で繁殖し多くは秋に発生する越年生雑草である。春になると株化し、春先から出穂しはじめ大量の種子をつけ、夏には衰退枯死する。春から発生した個体でも小型のまま出穂して結実することができる。
種子の休眠は浅く温度や水分の条件が合えば一年中いつでも発生するが、種子は好光性であるため発生深度は浅い。
耐寒性が強く、日陰でも生育し、踏みつけにも強く、また多様な種内変異を含んでおり、変種や近縁種と混在しながらさまざまな環境条件下でしぶとく生き残って種子を生産する。形態的に類似する多年生タイプのツルススズメノカタビラやオオスズメノカタビラなどもある。
根は浅いが密に生えて引き抜きにくい。畑地では耕起作業により既発生個体はほとんど除去されるが、種子からの発生は作物の播種・定植後も続き、除草剤散布や中耕など作物栽培中の防除が必要となる。
ゴルフ場の芝地内では、刈込みに強いため耕種的方法により除去するのは困難で、発生前に薬剤を使って防除するのが一般的である。寒冷地のゴルフ場などで芝生として使用されるケンタッキーブルーグラスは同じPoa属(スズメノカタビラ属)であるため、いったんスズメノカタビラの侵入を許すと薬剤による防除はきわめて困難となる。
【農耕地】
畑地では、作付け前に生育期の雑草を枯らすためにラウンドアップマックスロード、タッチダウンiQなどのグリホサートを有効成分にもつ薬剤、バスタ、ザクサなどのグルホシネートを有効成分にもつ薬剤、プリグロックスLなどの非選択性茎葉処理剤を用いる。
作付け前後のスズメノカタビラ発生前にはゴーゴーサンやトレファノサイド、クロロIPC、ボクサー、クレマートU、ラッソー、デュアールゴールドなどの土壌処理剤が有効である。
作付け後に使用するイネ科雑草対象の茎葉処理剤については、セレクトやホーネストは効果がある一方、ナブやワンサイドP、ポルトなどのようにスズメノカタビラには効果が劣るものもあるので注意が必要である。
【芝地】
ゴルフ場などの芝地には芝用の土壌処理剤が数多く農薬登録されており、秋期処理で春まで長期間発生を防止できるものもある。土壌処理剤の中には発生後の個体に対する効果が劣るものも多いが、カーブやクロロIPC、イデトップなどは発生後のスズメノカタビラにも効果があり、芝の中に発生を見かけてからの処理でも高い除草効果が期待できる。また、発生後のスズメノカタビラに対しては、シバゲンDFやモニュメント、トリビュートODなどの茎葉処理剤が有効である。
家周りの芝地には、シバキーププラスαのようにスズメノカタビラにも卓効な除草剤と肥料を組み合わせた製剤もあり、手軽に雑草を防除できる。
(筒井芳郎)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
稲の病害虫と雑草 |
ムギ類の病害虫 |
豆類の病害虫 |
ジャガイモの病害虫 |
サツマイモの病害虫 |
アブラナ科野菜の病害虫 |
トマト・ナス・ピーマンの病害虫 |
キュウリ・スイカ・メロンの病害虫 |
イチゴの病害虫 |
ネギ類の病害虫 |
菜園の病害虫 |
カンキツの病害虫 |
リンゴの病害虫 |
日本ナシの病害虫 |
西洋ナシの病害虫 |
モモの病害虫 |
カキの病害虫 |
ブドウの病害虫 |
花の病害虫 |
難防除雑草