診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
どちらも日本在来種で全国各地に分布するイネ科ススキ属の植物である。
ススキは秋の七草の一つであり、ススキの穂を動物の尾に見立てた「尾花」(おばな)や、茅葺き、家畜餌として利用される「茅」(かや)などとも呼ばれる。
日本では、ススキ、オギともに河川敷、道路周辺、空き地などに多く見られ、群落を形成する。ススキとオギは穂や葉の形がよく似るが、オギは地中に横走する地下茎から地上茎を立ち上げるため株立ちしない。またススキは穂の先端にのぎ(芒)がある点も異なる。
種子による繁殖も行うが、地下茎により栄養繁殖する多年生イネ科雑草である。春から夏にかけて葉が旺盛に茂り、草丈は1~2mと大型になる。
8月以降、長さ20~30cmの穂を形成する。地上部は冬には枯れるが、沖縄などでは常緑で草丈5mにもなる。
適度に管理が入っていれば問題になりにくいが、管理が粗放な場面で目立つようになり、群落を形成する。高速道路や鉄道ののり面、送電鉄塔の下などでは、有用植物(カバープランツ、芝草、ツツジ類など)の生育を妨げたり、標識などの視認性が悪くなるなど問題となる。
ほとんどは地下茎から発生して繁茂するため、耕起により地下茎を切断したり、地下茎そのものを除去することで防除できる。
刈払いによる防除は、株元から再生するため、年に数回は行う必要がある。刈払いを重ねることで徐々に生育量が小さくなり、そのうち他の植物に遷移する。年1~2回の刈払いはかえってススキ・オギの生育を維持する。
薬剤の散布は省力的であるが、薬剤の種類によって、効果の完成の遅速や、地下茎の枯殺程度が異なるため、目的に応じて選択する必要がある。
対象雑草にススキ、オギあるいは多年生雑草、多年生イネ科雑草を含む薬剤が有効となる。
非選択性茎葉処理剤では、ラウンドアップマックスロード、タッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサートを有効成分にもつ薬剤は地下部まで完全に枯殺できる。
同じ非選択性茎葉処理剤のバスタ液剤、ザクサ液剤などのグルホシネートを有効成分にもつ薬剤、プリグロックスLなどは、グリホサート剤に比べて除草効果の完成が早く主に地上部を枯殺するため、刈り取りの代用として使用できる。
またイネ科雑草を防除対象とする薬剤としてナブ乳剤、ワンサイドP乳剤がある。
上記の薬剤はいずれも適用範囲の多めの薬量を用いて茎葉にしっかりと散布する。
のり面等の管理には、地下茎を維持して、一定の期間、草丈の伸長を抑制するグラスショート、ショートキープ、モニュメント、ナインGなどの「抑草剤」も有効である。ススキ、オギの伸長を一定期間抑制する一方、広葉雑草は種類によって抑草ではなく枯殺作用を示し、枯殺程度が薬剤によって異なるため、群落の草種に応じて薬剤を選ぶ。
農耕地以外の場面では、上記の薬剤の他に、フレノック、ハイバーX、クロレートS、デゾレートAZがススキ・オギの防除に使用できる。これらは主に地下部から吸収され、枯殺までには時間がかかる。
その他、ホームセンターなどで販売される家庭用の粒剤の中にもススキを対象に使用できる薬剤がある。これらの粒剤は、ススキの株元に必要な薬量を散布する「株処理」、「株元処理」と呼ばれるスポット処理で使用する。
(山木義賢)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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