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難防除雑草

診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。

スギナ

Equisetum arvense(スギナ)
Equisetum palustre(イヌスギナ)
いずれもトクサ科

全国に分布し畦畔、堤防、開墾地などに多いが、最近は草地、果樹園、畑地などにも発生している。スギナは地上茎を除草剤処理や刈払い機で防除することは比較的簡単だが、強大な地下部の栄養繁殖器官を完全に枯殺したり、手取りで除去することは困難で、栄養茎も容易に再生してしまう難防除雑草である。
類似種にイヌスギナがあるが、全体にスギナより大型で、栄養茎の先端に胞子のう穂がつくこと、枝の付け根の節間の長さが主軸の葉鞘より短いことから区別できる。

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スギナ
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スギナは放置すると大きな群落となる ©全農教

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スギナの栄養茎 ©全農教

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ツクシはスギナの胞子茎。栄養茎とは別に出る ©全農教

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胞子のう穂(緑色の粉が胞子) ©全農教

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節のある根茎 ©全農教

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横走した根茎の節から栄養茎と胞子茎を出す ©全農教

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地下茎の節に塊茎をつける ©全農教

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イヌスギナは栄養茎の先端に胞子のう穂がつく ©全農教


生態

胞子と地下部の根茎・塊茎で繁殖する多年生雑草である。
早春に地下茎から発生する胞子茎(ツクシ)は胞子を数万個も散布する。胞子は湿った条件(pF2.7以下)で発芽し、秋までには成植物になる。胞子茎に続いて栄養茎が萌芽し、ほとんど同時に地下の根茎が伸長を始める。その生育は萌芽から2か月以降に旺盛となり、この頃には塊茎も形成され、4か月後頃には地上部で光合成された同化産物の75%以上が地下部に分配され、強大な地下部栄養繁殖器官が形成される。
地下部は地下30~40cm層に多いが、さらに地下1mにもおよぶことがある。約2cm間隔に節を持つ根茎が地中を横走し、その節から地上部に栄養茎を出す。長さ10cmの根茎切断片6本が植付け7か月後に80mにも伸長した調査例もある。塊茎は根茎の各節に1~数個着生し、重さ50~200mg/個で35%程度のデンプンを含み、1年に500~1,500個/㎡形成された例がある。
塊茎は頂芽と側芽を持ち、萌芽して垂直根茎と横走根茎を伸長させる。高温や乾燥といった不適な環境条件では主に根茎が生育し、好適な条件では塊茎から発生した根茎がすばやく伸長して勢力を拡大するといった巧みな繁殖戦略を持つ。

防除

新たな場所への繁殖域の拡大は主に胞子によるので、その侵入定着を防止することが大切である。胞子による繁殖は、夏期における中耕等で防止できる。侵入定着した地下茎は、耕うんにより分断・散布されてまん延するケースが多いので、スギナの侵入に対してはできるだけ早期に根絶をはかることが大切である。いったん繁殖を許すと作物栽培下で防除することはきわめて困難である。根絶をはかるには作物の休閑期に有効な除草剤を散布する必要がある。防除は栄養茎が萌芽して2か月経過した頃(温暖地では5~6月)、すなわち、強大な地下茎が形成される前に実施することが有効である。特に、刈り取りや浸透移行性の少ない除草剤で地上部のみを防除する場合は、処理時期が遅れないようにすることが重要である。
なお、スギナは生育に中性を好むので、石灰の施用は防除に直接役立たない。
また、水田に侵入したイヌスギナは湛水し、代かきすれば生育を抑制できる。

薬剤(農薬)

【農耕地】
農耕地で使用できる除草剤は限定される。MCPソーダ塩はトウモロコシなどイネ科作物に全面散布できるが、広葉作物には使用できない。果樹園(リンゴ、ナシ、モモ)、桑園および畦畔にはカソロンが有効である。一般の畑作物や果樹については、プリグロックスL、ザクサやバスタなどのグルホシネート剤、ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサート剤を作物や果樹にかからないように生育期に茎葉処理する。グリホサート剤は通常の多年生雑草に適用されている濃度では地上部の枯殺が困難である。その25倍液をていねいに散布すれば薬剤が浸透移行し、地下部まで含めて根絶可能であるが、効果の完成までには時間がかかる。
【畦畔・農道や家周りなど】
家周りや農道等における防除には上記の除草剤に加え、カソロンの成分であるDBNを含む混合剤、ベンポールおよびその成分であるDCBNを含む混合剤が有効である。また、芝生(日本芝)内に生えたスギナには、ザイトロンも効果が高い。これらの除草剤は既発生の地上部を枯殺するとともに、土壌処理効果により新たな発生を長期間抑えるが、移行性はないため地下部の栄養繁殖器官の根絶はあまり期待できない。
(野口勝可)

※掲載している薬剤(農薬)は 2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。


■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)

■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。

農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)

・殺虫剤(IRAC)2022年6月版(ver.10.3) *PDFデータ

・殺菌剤(FRAC)2022年6月版 *PDFデータ

・除草剤(HRAC)2020年3月現在 *Excelデータ

※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。

収録:防除ハンドブック「 難防除雑草

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