診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
ササとタケの区別は難しく、一般には大型のものをタケ、小型のものをササと呼ぶことが多いが、分類学上では、たけのこの皮(稈鞘)がやがて脱落するものをタケ類,皮がいつまでも残るものをササ類としている。
平野部でよくみられるササ類としては、本州の西部から四国、九州、沖縄にかけてはネザサが、関東地方から東北地方ではネザサの変種であるアズマネザサが、北海道ではクマイザサがあげられる。一方、山地や林内では、クマザサ、チシマザサ、スズタケ、ミヤコザサなどがよくみられる。ササ類は地方変種が多く、前述した以外にも多くの種や亜種が全国に分布している。
ササ類は、稈(かん)を農作物の支柱にしたり、工芸品の材料にしたり、チシマザサのように新芽を食用としたり、葉でちまきなどの食品を包んだりと有用な植物でもあるが、庭や道路脇などに生えてくると根ごと抜き取ることが難しく、刈り取ってもすぐに再生してくるやっかいな雑草である。
いずれも花が咲くことはまれで、主に地下茎によって繁殖する多年生雑草である。他のイネ科雑草と同様、刈り取りや河川氾濫のような攪乱に強く、道ばたや伐採跡地、河川敷などに多くみられる。
ネザサ、アズマネザサは、草高1~3m、葉は長さ20~25cm、幅2~3cmと細長く、稈(かん)の直径1~1.5cmで、稈鞘、葉鞘、節、葉など全体に無毛である。クマイザサは、草高1~2m、葉長は30cm以上で葉幅は8cm以上と広く、葉の裏は毛が生えてざらざらしている。クマザサは、草高1~2m、葉幅は4~5cmと広く、葉の長さは20cmを越え、越冬した葉の縁が枯れてきれいな隈取りになるのが特徴である。チシマザサは稈の基部が弓状に曲がっていることからネマガリダケの別名があり、葉は厚い革質で、両面とも無毛、草高は3m近くに達し、日本海側の雪の多い地帯に適応している。一方、ミヤコザサは草高50~80cmと低いため、雪の少ない太平洋側に多く、葉の裏面には軟毛が密生し、冬期にはクマザサのように葉の縁が白く隈取られる。太平洋側の林床に多いスズタケは、草高1~3mで地際から直立し、稈の直径は3~8mmと細めで、稈を包む鞘が節間より長いために稈面が露出しないという特徴がある。
耕起作業によって地下茎が切断されてダメージを受けるため、頻繁に耕起される圃場にはほとんど発生しない。一方、刈り取りには強く再生も速いため、年間を通じて刈り取り作業のみで管理されている場所では、一面がササ類で覆われてしまうことも珍しくない。ササ類は地下茎や根を密に発達させるため、土壌緊縛力が高く、法面の崩壊を防ぐ点からは有用な植物であるが、草高が高くなると視界をさまたげて交通の支障となったり、景観を損なったりする場合もある。そのため、刈り取りや抑草剤散布によって草高を抑えたり、除草剤を散布して枯らしたりするなどの管理が必要である。
【農道・家周りなど】
ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサート剤はササ類の地下部まで枯らす性質があるが、少なめの薬量では再生する可能性が高いため、ササ類を対象とした高めの薬量を使用して生育期に茎葉散布を行う。グリホサート剤のササ類に対する除草効果の完成には少なくとも1か月以上を必要とするが、有効成分は速やかに葉から地下部へと移行するため、散布後1週間以上を経過していれば、地上部を刈り取っても地下部からの再生を抑える効果は十分に発揮される。
【林地】
テトラピオンを有効成分とするフレノックや、塩素酸塩を有効成分とするクロレートS、デゾレートAZなどは、ササ類の生育期に散布することで高い枯殺効果を示す一方、スギ、ヒノキ、トドマツ、カラマツ、ブナなどの林木に対する安全性が高いため、これら植林地の林床に生えるササ類の防除用として使用できる。また、カルブチレートを有効成分とするバックアップは、ヒノキの林床で使用できる他、スギ、ヒノキ、トドマツを植え付ける前の地ごしらえ用として使用できる。
【道路法面・鉄道法面など】
法面維持に有用なササ類を枯らさずに長期間低い草高のまま維持させることができる抑草剤として、バウンティやグリーンフィールド、ランドワーカーなどがあげられる。最初に地際まで刈り込みを行い、以後、これらの抑草剤を年2回の頻度で繰り返し散布することで、ササ植生の草高を低く維持し続けることができる。
(村岡哲郎)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)
・殺虫剤(IRAC)2022年6月版(ver.10.3) *PDFデータ
・殺菌剤(FRAC)2022年6月版 *PDFデータ
・除草剤(HRAC)2020年3月現在 *Excelデータ
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
稲の病害虫と雑草 |
ムギ類の病害虫 |
豆類の病害虫 |
ジャガイモの病害虫 |
サツマイモの病害虫 |
アブラナ科野菜の病害虫 |
トマト・ナス・ピーマンの病害虫 |
キュウリ・スイカ・メロンの病害虫 |
イチゴの病害虫 |
ネギ類の病害虫 |
菜園の病害虫 |
カンキツの病害虫 |
リンゴの病害虫 |
日本ナシの病害虫 |
西洋ナシの病害虫 |
モモの病害虫 |
カキの病害虫 |
ブドウの病害虫 |
花の病害虫 |
難防除雑草