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難防除雑草

診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。

クズ

Pueraria lobata
マメ科

日本全国に分布し、秋に紫色の良い香りの花を多数咲かせ、秋の七草の一つともなっている。根からクズ粉や漢方薬が作られる他、葉は飼料や肥料にも利用でき、つる(茎)の繊維からはクズ布も作られる。
このように有用な植物である反面、耕作地や植林地に侵入すると、他の植物に絡み覆い被さり、植栽した苗木などを枯死させてしまうやっかいな雑草でもある。
かつては多くの農家が家畜の飼料用などとして採取していたが、現在ではこのような利用管理が行われなくなった結果、里山などでの繁茂が目立つようになっている。

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上方にからみつくものがないときは、横にひろがる ©全農教

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木を覆うクズ ©全農教

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他物にからみ、急速に成長する。 ©全農教

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クズの葉(3裂タイプ) ©全農教

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クズの葉(円形タイプ) ©植調協会

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枝豆のようなクズの実 ©全農教

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デンプンを蓄えたクズの根 ©全農教

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クズの花 ©全農教

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グリホサート剤の株頭注入処理 (ナタで切れ目を入れて薬液を滴下) ©植調協会


生態

種子と塊根で繁殖する多年生雑草である。日当たりの良い林縁や林間の開けた場所を好むため、山を切り開いて新しく建設された道路の法面などはクズの生育にきわめて適した環境となる。根粒菌との共生により、空中窒素を固定し利用する能力があり、痩せた土地でも良く育つ。
春に種子または塊根の上部(株頭)やそこから伸びた太いつるの節々から新たな芽を出し、他の植物や建造物などに絡みつきながら急速に成長する。葉は大形で互生し3つの小葉からなる複葉である。頂小葉はひし形の円形で3裂するものもある。左右の側小葉はゆがんだ円形から楕円形で時に3裂する。8~9月頃に紫色の房状の花を咲かせ、その後に枝豆の莢によく似た褐色の毛に覆われた実をつける。この頃になるとつるの成長速度は低下し、代わりに地下の塊根に多量のデンプンを蓄え始め、冬になると葉や細いつるは枯れる。
アメリカなどでは、一日に数十cmものびるといわれるその成長力が注目され、家畜の飼料や緑化、砂防を目的として日本から導入されたが、現在ではそれが野生化して高速道路や林地、農耕地などで繁茂し、有用樹を枯らしたり、電線に絡み付いてその重さで切断したりするなど、やっかい者扱いをされている。

防除

旺盛な成長力や再生力、また複雑に絡み合ったつるによる作業性の悪さなどにより、刈り取りなどの機械的な防除だけでは、労力、コストに見合った防除効果が得られないことが多い。
一方、除草剤については、茎葉散布処理や株頭滴下処理などでクズに高い効果を示す薬剤が登録されているので、これらを利用すれば効率的な防除が可能である。

薬剤(農薬)

【農耕地】
頻繁に耕起が行われる圃場内に定着することはまずないが、周辺の空き地から侵入してくるクズを防ぐには、ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサート剤を多年生雑草対象の高めの薬量で生育期のクズの茎葉に散布する。
【農耕地以外】
サーベル、ザイトロン、ショートキープ、デスティニーなどは、イネ科雑草より広葉雑草に高い効果を示す傾向があり、これらの剤を茎葉散布することで、クズを含む広葉雑草の多くが枯れ、代わりにススキやチガヤなど根が緊密に張るイネ科雑草が繁茂して法面保護に適したイネ科植生へと変化する。サーベルは、展着剤を加用して7~9月に処理を行うことでクズに対しきわめて高い殺草効果を示すが、ディスティニーは9~11月上旬の散布で高い効果を示すとされている。一方、ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサート剤は、クズの根まで枯らす力をもつが、薬液がかかった他の植物も全て枯らし裸地化してしまうおそれがあるため、平らな場所限定の使用とし、崩れやすい斜面での全面散布は控えたい。
これらグリホサート剤やショートキープ、ザイトロンにはクズに対して株頭注入処理やつる注入処理の登録があるので、クズの発生株数がごく少ない場合や前述のサーベルなどの広葉雑草対策剤を全面散布した後に枯れ残った大株のクズを完全に枯殺したい場合などに役立つ。株頭処理は、株頭から新たな茎が伸び出してきて株頭の位置をみつけやすくなる時期(関東では5月頃)に行うのが効率的である。株頭処理用としては、専用容器でクズの株頭に滴下するクズコロンや、薬剤を染み込ませた楊枝をクズの株頭に差し込むケイピンエースなどユニークな製剤も販売されている。
(村岡哲郎)

※掲載している薬剤(農薬)は 2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。


■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)

■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。

農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)

RACコード(農薬の作用機構分類)

※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。

収録:防除ハンドブック「 難防除雑草

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