診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
ギシギシ類は道ばたや堤防、水田畦畔、畑周りなどに普通にみられる多年生雑草で全国に分布する。エゾノギシギシは牧草地にも侵入し、その旺盛な生育によって牧草の生育が妨げられ、体内にタンニンやシュウ酸を含み家畜の嗜好性も劣るため問題雑草となっている。
ギシギシ類には、在来のギシギシの他、ヨーロッパ原産のナガバギシギシ、エゾノギシギシ、アレチギシギシなどがある。草高と開花期は、ギシギシが40~100㎝で6~8月、ナガバギシギシが80~120㎝で5~9月、エゾノギシギシが60~120㎝で6~8月、アレチギシギシが50~100㎝で5~7月である。根生葉の形も似ているため、写真のように果実の形で見分けることとなるが、お互いの交雑種も存在しているため、区別は難しい。一方、同じRumex属で似た草種として、「スカンポ」とも呼ばれるスイバ(草高30~80㎝、4~6月に開花)やヒメスイバ(草高20~50㎝で群生し5~8月に開花)などのスイバ類があるが、根生葉の形がスイバは矢じり型でヒメスイバはほこ型であるのに対して、ギシギシ類は長円形であることから容易に区別ができる。
エゾノギシギシの種子生産数は一株当たり数千から十万という報告があるように、その繁殖力は非常に強い。種子の休眠は浅く、落下した種子の一部はまもなく発芽し、幼植物で越冬する。また一部の種子は翌春から夏にかけても出芽する。越冬した株は春から夏に抽苔開花し、夏から初秋にかけて結実し、結実後の個体は根に栄養分を蓄えロゼット状の根生葉を出した状態で再び越冬する。
ギシギシ類の根は太く地下深くまで伸びているため人手で掘り取るのには労力を要するが、トラクターによる耕起が可能な場所では、ていねいな耕起を短期間に複数回行うことで栄養体からの発生を効率的に防ぐことができる。一方、刈り取りには強く、何度でも再生してくるため、永年草地など頻繁な耕起が行えない場所では除草剤を用いた防除が有効となる。
【農耕地】
牧草地で使用できる除草剤の中で、牧草中に混生したギシギシ類に対して有効な剤としては、アージラン、ハーモニー、バンベル-Dがあげられる。これらは生育期のギシギシの茎葉に散布するタイプのものであるが、バンベル-Dについては、「秋期刈り取り後30日以内」という散布時期の制限があるので注意する。
また、圃場周辺や作物を植付ける前の圃場内に発生しているギシギシ類に対しては、ラウンドアップマックスロードやタッチダウンiQ、サンフーロンなどのグリホサート剤が有効であるが、作物の茎葉部に薬液がかかると著しい薬害を生じるので、散布時には十分に注意する。
【農耕地以外】
ギシギシ類とともに発生している他の植物を全て枯らしたい場合には、前述のグリホサート剤の茎葉散布が有効である。一方、芝生内のギシギシを防除する場合には、広葉雑草を対象としたバンベル-D、ザイトロン、サーベル、アトラクティブなどの他、一年生イネ科雑草と広葉雑草を対象としたシバゲン、モニュメントなどの茎葉散布が効果的である。また傾斜地などでイネ科植物を残しつつギシギシ類を防除したい時には、バンベル-D、ザイトロン、サーベル、アトラクティブなどの広葉雑草対象の除草剤や抑草剤のショートキープなどが有効である。
(村岡哲郎)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
稲の病害虫と雑草 |
ムギ類の病害虫 |
豆類の病害虫 |
ジャガイモの病害虫 |
サツマイモの病害虫 |
アブラナ科野菜の病害虫 |
トマト・ナス・ピーマンの病害虫 |
キュウリ・スイカ・メロンの病害虫 |
イチゴの病害虫 |
ネギ類の病害虫 |
菜園の病害虫 |
カンキツの病害虫 |
リンゴの病害虫 |
日本ナシの病害虫 |
西洋ナシの病害虫 |
モモの病害虫 |
カキの病害虫 |
ブドウの病害虫 |
花の病害虫 |
難防除雑草