診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
地中海地方原産で、本州から四国・九州・沖縄の路傍など日当たりの良い場所で生育する越年生雑草である。名前や姿はエンドウだが、「エンドウ属」ではなく「ソラマメ属」である。
豆果が黒く大きいことからカラスの名がつけられ、標準和名では小葉の形を矢筈(やはず)に見立てたことからヤハズの名がつけられたようである。
近縁の仲間には、スズメノエンドウ、カスマグサなどがある。
秋に発芽し、根もとから分枝して四方に広がり、やがて直立し、春には草丈60cm程度になる。茎は四角柱状。葉は羽状の複葉。複葉の先端は巻きひげとなって他の物にからみつく。茎の長さは150cm程度になることもある。
花期は3~6月でマメ科特有の蝶形花をつける。
豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばすため、近くにいると「パチ、パチ」と音が聞こえる。
カラスノエンドウの種子は大きさや重さがムギ種子に近く、収穫物に混入するとふるいなどによる選別が困難で等級が下がる原因になることから、ムギ畑で発生した場合は徹底した防除が必要である。ムギ畑ではムギの播種後に発生するが、地表面下10cm 前後からでも出芽するため、発生は不斉一で長期にわたる。また、出芽しても気温が低い間は生育が緩慢であるため、生育が進んでから気づかれることがある。
除草剤の散布や中耕土入れを行っても防除できなかったものは、種子の混入を防ぐために収穫前に手で抜き取る必要がある。ムギの収穫期には、カラスノエンドウは茎が緑色、豆果が黒色であるためムギの中で見つけやすいが、先端の巻ひげがムギに絡みついているため、抜き取るには手間がかかる。
ムギ畑用の土壌処理剤としては、ガレースやゴーゴーサンが有効である。しかし、カラスノエンドウは発生が緩慢であるため土壌処理剤のみでは完全に防除することはできないので、茎葉処理剤等との組み合わせ防除が必要となる。
茎葉処理剤はアクチノールの効果が高く、1月中旬~3月上旬(カラスノエンドウの6葉期)に散布するのが適当である。一方、ハーモニーは生育を抑制するが枯死には至らず、エコパートやバサグランは効果が劣るため除草剤の選択については注意が必要である。
また、ムギ畑の周縁部に生育しているカラスノエンドウについても、翌年の発生源である種子を作らせないために、非選択性の茎葉処理除草剤で枯らすなどして完全に防除する必要がある。
(山口晃)
※掲載している薬剤(農薬)は
2021年5月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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