診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
果実、枝葉、粗皮下などカキのあらゆる部位を加害する。しかし、実質的な被害は排泄物である甘露に発生するかび「すす病」による果実の汚損と「火膨れ症」と呼ばれる着色異常である。被害は収穫前になって果実の着色が進むと急に目立つようになる。本種はへたの下など狭い隙間を好んで生息するため栽培者の目にとまりにくく、被害が出て初めて多発生していることに気づくことも多い。
主に2齢幼虫で越冬し、年3回の発生である。幹の粗皮下などで越冬した幼虫は4月頃新梢へ移動し加害を始める。5月には成虫となり産卵を始め、第1世代幼虫が6月中旬頃発生する。第2世代幼虫のピークは7月下旬~8月中下旬、第3世代幼虫は9月下旬頃となる。第1世代幼虫までは比較的齢期が揃っているが、以降はダラダラとした発生になる。本種の卵は黄色で非常に小さいが白色の卵嚢に包まれた数百個の卵塊として産卵されるのでほ場で目につきやすい。特に越冬世代成虫の卵塊は花蕾や新梢に産まれるので見つけやすくその年の発生を知る良い手がかりになる。本種は雌雄で生態が大きく異なり、雌は2齢幼虫とほぼ同じ姿で大きくなりそのまま成虫になるが、雄は3齢幼虫を経ず繭を作り蛹化し成虫になる。栽培者がふだんほ場で目にするのは雌成虫で、雄成虫は小型で形態が著しく異なるためほとんど目にとまることはない。本種の移動は主に風によるふ化幼虫の分散により起こっているものと考えられるが、越冬幼虫は活発に歩行し樹内を移動する。また、アリが幼虫をくわえて運ぶ姿を観察したこともある。
本種にはフジコナカイガラクロバチなどの土着天敵が多く存在するため、天敵の保護を第一に考え、必要性の低い殺虫剤の散布は控える。特に、天敵に長期間悪影響を及ぼす合成ピレスロイド系殺虫剤やネオニコチノイド系殺虫剤の連用はその後に本種の大発生を引き起こす可能性が高いので、カメムシ多発年以外は絶対に連用しない。休眠期の粗皮削りは効果が高い。なるべくていねいに細い枝まで剥くことが肝要で手間はかかるが、本種のみならず粗皮下で越冬する害虫を一度で防除できるのでお薦めしたい。休眠期のマシン油乳剤の散布は枝に薬害が発生しやすいこと、散布しても樹皮下の越冬虫を油膜で被覆できないことから推奨しない。薬剤防除を実施する場合は、散布適期である若齢幼虫期を把握することが重要である。前述のように第2世代以降は発育態が様々になるので、越冬幼虫と第1世代幼虫が主な対象となる。また、最近開発された殺虫剤の樹幹塗布法は散布では薬液がかかりにくい場所に隠れている越冬幼虫に対しても効果が高い防除法である。少し手間はかかるが2~3月の休眠期に実施できて残効が長いこと、散布しないため天敵に悪影響がないことがメリットである。
アプロード、アルバリン(樹幹塗布法)、オリオン、コルト、スタークル(樹幹塗布法)、トクチオン、モスピラン、モベント※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)
・殺虫剤(IRAC)2022年6月版(ver.10.3) *PDFデータ
・殺菌剤(FRAC)2022年6月版 *PDFデータ
・除草剤(HRAC)2020年3月現在 *Excelデータ
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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