診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
雌成虫は約3.5mmで濃紫褐色のやじり状の虫体被覆物(カイガラ)を持つ。枝、葉、果実に寄生する。繁殖が旺盛で、寄生密度が高くなると、枝枯れし、樹が枯死することもある。果実に雌成虫が寄生すると、ゴマを振り掛けたように見え、商品価値が著しく低下する。果実上の寄生部位は着色が悪く、収穫期になっても緑色の斑点として残る。
主に成虫で越冬し、5月上中旬に第1世代の1齢幼虫が初発する。雌の産卵は2か月程度の長期にわたる。ふ化直後の幼虫は歩行により移動するが、間もなく定着して移動しなくなる。幼虫は2齢を経過した後、7月上旬に成虫が初発し、7月下旬には第2世代の1齢が発生する。地域によっては9月下旬~10月に第3世代の幼虫が発生する。幼虫が果実に移動するのは第2世代または第3世代の幼虫発生時期である。2齢幼虫の発生時期以降に形成される雄繭は白色で目立つことから、園地で本種を発見する手がかりになる。
1980年に中国から導入された有力な2種の天敵(ヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチ)は全国のカンキツ産地に定着している。冬季のマシン油の散布によりカイガラムシの初期密度を抑えることで、天敵の効果が安定し、ヤノネカイガラムシの密度を低く維持することが可能である。ヤノネカイガラムシが多発し、夏季に防除が必要な場合には、各世代の2齢幼虫の発生盛期(6月下旬と8月下旬)に登録薬剤の散布を行う。散布適期は気象条件により変動するが、第1世代は1齢幼虫の初発から40日後、第2世代は30日後が目安である。天敵であるヤノネキイロコバチはヤノネカイガラムシの2齢幼虫または未成熟成虫に産卵し、ヤノネツヤコバチは雌成虫に産卵する。従って、これらの寄生蜂の産卵時期にあたる7月と9月の薬剤散布はなるべく控える。雌成虫のカイガラに天敵の脱出孔(丸い穴)の有無を確認することにより天敵の発生状況を把握できる。
アプロード、アルバリン、コルト、スタークル、トランスフォーム、モスピラン、マシン油など。
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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