診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
成虫の体長は約0.8mmで黄色、翅は褐色なので歩行中は背にすじがあるように見える。成・幼虫が幼果期から着色期前の果実を吸汁加害し、外観を損傷する。落弁期から8月の時期は、成・幼虫がヘタと果実の間隙に生息して果皮を加害する結果、果梗部の灰褐色のリング状の被害となる。早い時期に加害されるほどリングが大きくなり、収穫期のリングの大きさによって加害された時期が推定できる。7月以降になると果頂部への加害も開始され、9月頃までの果実肥大期に加害されると、加害部にカルスが形成される結果、灰褐色の被害となる。9~10月の果実の肥大が鈍くなった時期に吸汁されるとその部分にカルスが形成されないので、黒褐色の被害となる。品種や気象条件により被害発生時期や程度は若干異なる。成・幼虫ともに新梢も吸汁加害するが、実害はほとんどない。
成虫で越冬し、3月下旬頃に発芽直後の寄主植物に産卵を開始して繁殖が始まる。卵、幼虫(2齢)、蛹(2齢)を経て成虫となる。1年に7〜9世代を繰り返す。本種は寄主範囲が広く(寄主植物約200種)、新梢で繁殖する。したがって、カンキツ園周辺の新梢が発生している寄主植物に繁殖場所を移しながら、世代が繰り返される。カンキツはあまり好適な寄主植物ではなく、園周辺のチャ、イヌマキなどで繁殖した後に成虫が飛来し加害する。カンキツ園への飛来が多くなるのは、園周辺の寄主植物における各世代の成虫羽化時期である。カンキツ園周辺の本種が寄生する防風垣などでの新梢発生量が多く、そこでの成虫羽化時期と刈り込み時期が一致するとカンキツ園への飛来が特に多くなる。
6〜9月に登録薬剤を散布する。成虫飛来盛期に散布すると効果が高い。黄色平板粘着トラップで成虫の発生状況が把握できる。アメダスデータなどを用いて本種の有効積算温度を計算することによって各世代の成虫発生時期を予測できるので、都道府県によっては成虫飛来時期の予測情報を提供している。合成ピレスロイド剤などに対する薬剤抵抗性が確認されているので、薬剤の選択に注意する。樹冠占有面積率60%以下の粗植園で反射率90%以上のシートを全面マルチすると薬剤散布と同等の効果がある。防風樹が発生源となっているケースが見られるが、刈り込む時期を注意し、夏季に新梢が発生しにくいような管理を行うことによって、多発を防止できる。
アグリメック、アクタラ、アドマイヤー、アルバリン、エクシレル、キラップ、コテツ、コルト、スタークル、スピノエース、ダントツ、ディアナ、ハチハチ、ファインセーブ、ホワイトコート、モスピランなど。
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
目次へ戻る | 病害画像インデックス | 害虫画像インデックス | ホームへ戻る
稲の病害虫と雑草 |
ムギ類の病害虫 |
豆類の病害虫 |
ジャガイモの病害虫 |
サツマイモの病害虫 |
アブラナ科野菜の病害虫 |
トマト・ナス・ピーマンの病害虫 |
キュウリ・スイカ・メロンの病害虫 |
イチゴの病害虫 |
ネギ類の病害虫 |
菜園の病害虫 |
カンキツの病害虫 |
リンゴの病害虫 |
日本ナシの病害虫 |
西洋ナシの病害虫 |
モモの病害虫 |
カキの病害虫 |
ブドウの病害虫 |
花の病害虫 |
難防除雑草