診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
育苗期に苗床で発病した苗の地下部および地際部の茎には黒い病斑が認められ、下葉が黄化する。畑では塊根がハリガネムシ(コメツキムシ幼虫)やコガネムシ幼虫等の土壌害虫やネズミに食害されると土壌中の病原菌が侵入し、収穫時に発病する。また、病原菌は収穫時に生じた塊根の傷口から感染し、貯蔵中に発病する。収穫時に発病が認められた畑の塊根は、外観上健全であっても貯蔵中に著しく発病することがある。塊根には直径2~3㎝の黒色の病斑を生じ、病斑の中央部には子のう殻の先端が突出して毛のように見える。症状が進むと病斑は融合し、腐敗は塊根の内部に進展し、病斑部はくぼんでくる。
黒斑病は土壌中の糸状菌の一種によって引き起こされる。本病は苗床や畑で苗、茎、塊根に発生するが、とくに貯蔵中の塊根に発生すると被害が大きい。本病を含め、各種腐敗性の病害に侵されたサツマイモは、ファイトアレキシンと呼ばれる生理活性物質を生成する。ファイトアレキシンには人畜に毒性のあるイポメアマロンや4-イポメアノールなどの物質が知られている。腐敗サツマイモを飼料として家畜に供与すると中毒することがあるので、注意する。
病徴のない健全な塊根を種いもとして選抜し、種いもは温湯消毒(47~48℃、40分間)あるいは農薬で消毒して用いる。また、苗の消毒を行う場合、苗の基部約10㎝を47~48℃の温湯に15分浸漬するか、農薬の希釈液に決められた時間浸漬する。貯蔵中における発病を防止するためには、キュアリング処理の効果が高い。収穫した塊根をキュアリング庫に積み込み、温度33±2℃、湿度90~95%の条件に設定して4日間程度(約100時間)保つ。キュアリングを行うことで、塊根の傷口や表皮下にコルク層が形成され、各種腐敗性病原菌の侵入を抑制することができる。処理後、速やかに庫内を開放、放熱して温度13~15℃、湿度90%以上の条件下でそのまま貯蔵する。なお、キュアリングには殺菌効果はないので、キュアリング処理以前の塊根に病原菌が侵入した場合は、貯蔵中に腐敗することが多い。したがって、収穫した塊根は、速やかにキュアリングを行うことが大切である。土壌中の病原菌密度低減には、サツマイモやマメ科以外の作物(トウモロコシなど)を導入し、1~2年輪作することが効果的である。本病の防除に加え、ネズミや土壌害虫の被害が多い畑ではこれらの防除も併せて行う。
トップジンM、ベンレート※掲載している薬剤(農薬)は
2021年3月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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