診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
幼虫および成虫が根に寄生する。寄生を受けたジャガイモは、栄養分が奪われて生育が抑制される。線虫が高密度に寄生すると茎葉が萎凋・黄化し、被害が進行すると下葉が枯れ上がり上葉のみが見られる(毛ばたき症状)ようになり、大幅な減収となる。枯死に至る場合もある。
ジャガイモの根が伸長すると、根が出す誘引物質に反応して、土壌中の卵から孵化した二期幼虫が、根に穴をあけて侵入する。幼虫は根の内部で成長し成虫になる。雌成虫は根に寄生しながら、体を根の表面に出して球形にふくらみ、内部に200~500個の卵を産む。成長にともない、乳白色から黄金色に変化するので、ゴールデン・ネマトーダとも呼ばれる。その後、土壌中に脱落して死亡し、表皮は褐色の厚い殻に覆われて耐久態のシストになる。シスト内の卵は、温度や湿度などの環境の変化や化学物質などから守られ、寄主植物が植栽されるまでの間、休眠して長期間生存することが可能で、10年以上生存した例がある。寒冷地では、年1世代、暖地の二期作地帯では年2世代を経過する。なお、本線虫の類縁種であるジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida)の発生が、2015年に国内で初めて、北海道の一部で確認された。この線虫は、ジャガイモシストセンチュウ に類似する線虫であるので、土壌の移動防止などの既に実施されているジャガイモシストセンチュウまん延防止対策を徹底すれば、急速にまん延するおそれはないと考えられる。
既発生地域では、植物検診および土壌検診を実施して、発生密度に応じた防除対策を立てる。低密度圃場では薬剤防除を行うが、高密度圃場では、抵抗性品種の導入や非寄主植物との輪作が必要である。なお、本線虫は一度発生すると根絶することが困難なので、未発生地域では、検査に合格した無病種いもを使用し、既発生地域から植物や土壌を移動させない。特に、車両や農機具、長靴などに付着した汚染土壌とともに線虫を持ち込まないことが重要である。
土壌くん蒸剤:クロルピクリン、テロン、D-D
植付時土壌混和剤:ガードホープ、石灰窒素、ネマキック、ネマトリンエース、バイデート、ビーラム・ネマクリーン、ラグビー※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)
・殺虫剤(IRAC)2022年6月版(ver.10.3) *PDFデータ
・殺菌剤(FRAC)2022年6月版 *PDFデータ
・除草剤(HRAC)2020年3月現在 *Excelデータ
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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