診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
近年土壌のアルカリ化とともに発生が増加している病害である。塊茎の表面に大きさ不同で周辺部がやや隆起し、中央部がやや陥没した淡褐色~灰褐色のかさぶた状の病斑を形成する。病斑下の組織は淡褐色を呈し、わずかに腐敗する。この症状が本病の典型的なものでcommon scabと呼ばれる。ケラの食害跡のような深く陥没した大型の病斑(deep scab)が形成されることも多く、また、病斑がクッション状に盛上がる症状(raised scab)のものがある。一方、浅在性の病斑が網目状亀裂となる症状(russet scab)のものがある。これは亀の甲症とも呼ばれる。これ以外の症状では、堀取り直後の塊茎の病斑部に灰白色の粉状物(病原菌の菌糸、胞子)が見られる。収量には影響しないが、多発すると食用としての価値を大きく減ずる。
ジャガイモをはじめ、テンサイ、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウなど多数の根菜類にそうか病斑を生ずる。
病原細菌は土壌中で極めて長年にわたり腐生的に生存して土壌伝染するほか、高率に種いも伝染する。塊茎形成期に20℃以上と地温が高く、乾燥すると多発する。菌種を問わず、pH5.2以上で発生し、6.5以上で多くなる。そのため石灰質資材を多用すると多発する。また、土壌pHより土壌交換酸度y1※との関係が深く、y1が5以下では発生が助長される。未熟堆肥などの粗大有機物の施用はy1を低下させて多発を促す。世界的に品種の抵抗性の差異が確認されている。(※交換酸度y1:土壌を酸性にする物質の量(水素イオンおよびアルミニウムイオン)を示す数値。酸性土壌矯正の目安となる石灰量を知ることができる)
無病種いもを使用する。連作や未熟有機物の施用を避ける。種いも消毒を行う。土壌酸度調整資材によって土壌pHを5.3以下とし、塊茎形成期から約1か月間土壌pF2.3を目安に灌水する。
土壌消毒剤にはD-D、ガスタード、クロールピクリン、ダブルストッパー、ドロクロール、バスアミド。種いも消毒剤にはアグリマイシン-100、アグレプト、アタッキン、キルパー、コサイド、コサイドボルドー、シードラック、スキャブロック、ストマイ、セイビアー、セレスト、ネビジン、バクテサイド、フロンサイド、モンカットプラス。※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月末現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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