診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
主に穂に発生するが葉にも発生することがある。穂では、乳熟期ごろから小穂がやがて白く枯れる。その後罹病小穂の頴の合わせ目や表面全体に桃色~橙色の胞子と菌糸などの塊(スポロドキア)が認められる。発病が穂軸まで進展するとそこから上部の小穂は枯死する。被害粒は赤かび粒と呼ばれ、白く退色してしわがより、ときに桃色がかって見える。病原菌の中には人畜に有害なデオキシニバレノール(以後DON)やニバレノール(以後NIV)などのかび毒を産生し、感染した麦粒はかび毒に汚染される。2022年にはDONによる麦粒汚染の基準値が1.0mg/lkgに設定された。
有性世代の名前と無性世代の名前が混在しているのでわかりにくいが、いずれの菌もフザリウムの仲間である。DONおよびNIV汚染で主に問題となる菌種はG.zeaeおよびF.asiaticumである。西日本ではNIVを産生する菌が優占し、北海道ではDON産生菌が優占する傾向がある。F.avenaceumおよびMonographella nivalisはDONおよびNIVを産生しない。Monographella nivalisは北海道の道東地方を中心に多発し減収被害をもたらすことがあり、多発すると保菌粒率が高まり、紅色雪腐病の発生が多くなる。赤かび病菌が最も感染しやすい時期は開花期ごろであり、この時期に雨天が続くような場合には発生が多くなる。トウモロコシ残渣はG.zeaeの伝染源となるため、トウモロコシ残渣が土壌表面に多く残る圃場ではDON汚染リスクが高まる場合がある。
開花時期に薬剤散布を行う。適期に収穫し、収穫後は速やかに乾燥する。粒厚選別や比重選別を行い、赤かび粒を除くとともにDON、NIV汚染低減を図る。倒伏するとDON、NIV汚染リスクが高まるため、過繁茂にならないように適正な肥培管理を行う。
シルバキュア、トップジンM、バラライカ、ベフラン、ミラビス、リベロなど。
(小澤徹・渡邊健)
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(FAMIC:外部サイト)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表を農薬工業会が日本語に翻訳:外部サイト)
・殺虫剤(IRAC)2022年6月版(ver.10.3) *PDFデータ
・殺菌剤(FRAC)2022年6月版 *PDFデータ
・除草剤(HRAC)2020年3月現在 *Excelデータ
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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