診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
本病は、オオムギ、コムギに発生する土壌伝染性病害である。本病ならびに縞萎縮病の外観病徴は酷似しているため、目視による判別は困難である。本病の病徴は縞萎縮病に比較して植物体の節間の伸長が悪く、萎縮の程度は激しくなる。分げつは増加し、叢生となる。特にオオムギで顕著で、新葉はねじれ、葉のモザイクは黄緑色で長く、緑の部分がやや濃い傾向にある。コムギでは葉色がアントシアンを帯び紫褐色となることがある。また、地域により、本病ウイルスとオオムギ縞萎縮ウイルスやコムギ縞萎縮ウイルスとの重複感染することがある。重複感染すると株の萎縮程度がより激しくなり、モザイクが強調される傾向にある。気温が上昇し、植物体が生長しても葉のモザイクは消失せず、壊死斑となることもある。
ウイルスは土壌中に生息するネコブカビ類の一種、ポリミキサ・グラミニス菌の媒介で播種10日後〜1か月位の間に根から感染する。本病の発生生態は、オオムギ縞萎縮病とほぼ同じである。発病は早春新葉の伸長開始後で、この時期には新たな感染およびまん延はない。ウイルスの増殖適温は10〜15℃で、媒介糸状菌の遊走子は土壌中を泳いで根に侵入するため、播種1か月位の地温が15℃前後でかつ適度の降雨があった年に感染が多い。そのため、一般に適期播種した麦に発生が多い。土壌伝染病で、ウイルスは3〜15cmの土壌に存在する。トラクタのロータリ等に付着した汚染土壌によって他圃場に拡散する。
それぞれの地域で普及している抵抗性品種を利用する。発病圃場の土壌や被害株の根部残渣が伝染源となるため、農作業は発病した圃場を最後にして、伝染源を無病畑にもち込まないようにするとともに、作業後は機械に付着した土を必ず洗い流す。
登録農薬はない。
(渡邊健)
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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