診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
本病はコムギにのみ発生し、病原性の異なる複数のレースが認められている。赤さび病が発生すると、穂数や一穂粒数の減少、粒重の低下に大きく影響するため、多発した場合、20~30%減収する。また、植物体の生育や子実の品質などに対しても悪影響を及ぼす。
本病は糸状菌の一種によって引き起こされ、葉や茎に赤褐色、小形、楕円形の夏胞子層と呼ばれる胞子の塊と黒色で表皮の破れない冬胞子層と呼ばれる胞子の塊の2種類を生じる。夏胞子層の表面が破れると、中からさび色の粉(夏胞子)が飛散する。夏胞子の発芽適温は15~23℃、植物体に侵入する適温は18~25℃とされ、風で飛散して気孔から侵入し、7~10日で夏胞子層を形成し、麦が成熟するまで飛散と増殖を繰り返す。一方、冬胞子層は生育の後半に現れ、耐久器官としての性質を持ち、越冬後、もう一つの宿主であるアキカラマツ(キンポウゲ科の野草)に寄生するための胞子を形成する(このように全く異なる二つの植物に交互に寄生することを異種寄生と呼ぶ)。アキカラマツ葉上ではさび胞子と呼ばれる別形態の胞子を形成し、この胞子がコムギへの第一次伝染源になる。コムギの生産圃場では収穫後のこぼれ麦上で越夏した夏胞子が秋に播種された麦に感染し、植物体上で夏胞子または菌糸の形で越冬して翌春の伝染源となることが多い。多肥条件下や冬が温暖で雨が多い年、春先に麦がよく繁茂した年に発病が多い。また、高温多照の気象条件は発病を助長する。
発病圃場で収穫後に発芽したこぼれ麦やひこばえは、抜き取って適切に処分し、本菌の秋季発生源を断ち切る。過繁茂になると発病しやすいので、適正な播種量と播種時期および施肥量を守る。薬剤防除は発生初期に行う。
散布薬剤としてシルバキュア、ストロビー、チルト、バシタック、ワークアップなど。
(渡邊健)
※掲載している薬剤(農薬)は
2022年1月現在登録のあるものから抜粋しています。
農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、地域の防除暦や病害虫防除所等の指導に従ってください。
■農薬の登録情報について
最新の登録情報はこちらのページをご確認ください。(農林水産省 農薬登録情報提供システム)
■農薬の作用機構分類(国内農薬・概要)について
薬剤抵抗性の発達を回避するため、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を心がけてください。
農薬の系統別分類はこちら
(国際団体CropLife International (CLI) の対策委員会が取りまとめた殺虫剤、殺菌剤、除草剤の分類表をクロップライフジャパンが日本語に翻訳:外部サイト)
RACコード(農薬の作用機構分類)
※実際の薬剤抵抗性対策については、お近くの病害虫防除所等関係機関などの指導に従ってください。
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