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特集

イネの最重要病害「いもち病」

いもち病に効果のある水稲用箱処理や、いもち病への抵抗性品種の普及などで、ここ数年全国的にはいもち病は少発生で推移しています。しかし、地域によってはいもち病、特に穂いもちの防除が必要なところも多く、本田防除も依然として重要です。ここでは、これからの時期に注意が必要な「葉いもち」、「穂いもち」の発生と対策を解説します。
いもち病

いもち病とは

稲作において最も重要な病害です。苗、葉、穂と、すべての段階で被害が発生します。

葉いもち
葉いもち

病斑の色や形状から、いくつかの型に分けられます。また、発生の仕方にもいくつかの型があります。

穂いもち
穂いもち

発生すると減収、品質低下を招くため、最も影響が大きく、注意が必要です。


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こんな条件のとき、いもち病が発生しやすくなります!

1.繁殖に適した温度が続く

20?25℃前後の温度が続くと、病原菌の活動が活発になり、被害が急速に広がる
湿潤(急性)型病斑 (右写真参照)が多く発生します。

湿潤(急性)型病斑

湿潤(急性)型病斑


2.高い湿度

いもち病菌の発芽・侵入には水滴が不可欠です。特に雨はいもち病発生の大きな原因となります。
湿度が90%を超えると胞子の飛散が活発になり、また胞子の発芽に必要な水滴も付きやすくなります。
病斑は湿度が高いと湿潤(急性)型となり病斑上に多数の胞子が形成されますが、低いと褐点型(右写真参照)になり、それ以上進展せず、胞子もほとんど形成されません。

褐点型病斑

褐点型病斑


3.日照不足

イネは出葉後、成長するにつれて抵抗力を高める性質を持っていますが、日照不足になるとこの性質が抑えられ、病気に弱い状態が続いてしまいます。

日照不足

4.施肥

窒素の多施用や頻繁な追肥は、イネの抵抗力を弱めるとともに、生い茂りすぎることで株内の湿度が高まり、いもち病が発生しやすくなります。

罹病性品種で窒素が多すぎる場合、または降雨が続いた場合に現れる湿潤(急性)型病斑は、おびただしい量の分生子が作られる、伝染源としてもっとも恐ろしい病斑です。このような病斑が多く作られると、イネは萎縮して、いわゆる「ずり込みいもち」になります。

いもち病が発病する順序

いもち病は胞子で伝染します。初め、

  • 昨年いもち病にかかった被害ワラ
  • 病気にかかった種もみ
  • 苗床で病気にかかった苗
  • 遠くの圃場から飛来してきた胞子

などから感染し、環境条件が整うと、下記図の過程をイネ体上で行い、植物内に侵入していきます。

ヒメシバ

苗いもちの葉鞘基部の病斑。立枯れを免れた発病苗を本田に移植すると、葉いもち早期多発の原因となる。

いもち病菌の生態
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監修:福島県農林水産部 農村振興課 根本 文宏