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クロメンガタスズメ

Acherontia lachesis(Fabricius)

英名:death's head

チョウ目スズメガ科

2016-01-29 最終更新

本種は,国外では中国中南部,台湾,東南アジア,インドなどに分布する熱帯起源の種で,生活史については未解明の部分が多い.近似種のメンガタスズメ(p629,p754)より南方系の種で,日本では従来九州以南のみから記録されていたまれな種であったが, 2000年前後に,四国~中国地方で発生が確認されたのをはじめ,その後も分布の拡大と北上を続け,2007年には関東地方,2009年には福島県まで達し,ナス科作物等で実害も生じるようになった.

形態:
成虫は開張100~125㎜,メンガタスズメに似るが,前翅・頭部・胸部には赤褐色鱗が多い.とくに胸背部の人面模様の周辺は赤褐色毛が多く,灰色を帯びる.後翅背面は橙黄色で,メンガタスズメよりも著しく太い2すじの黒帯があり,腹部の黒帯もより太い.幼虫は老熟すると9~10cmに達する.体色には個体によって緑色,黄色,褐色などの多型がある.尾角の先端が背面に向かって鉤状に強く湾曲し,これによってメンガタスズメの幼虫と識別できる.蛹は紡錘形で光沢があり,体長55~60mm.成虫も幼虫も刺激を受けると発音する習性がある.

加害作物:
【野菜】シソ科野菜,ナス科野菜,ユウガオ.
【特用作物】アサ,ゴマ,タバコ.
【花卉】アサガオ,クジャクソウ,ノウゼンカズラ,ヒマワリ.
おもな作物には上記のようなものがある.幼虫は広食性で寄主植物はアサ科,ウリ科,キク科,ゴマ科,ゴマノハグサ科,シソ科,ナス科,ノウゼンカズラ科,ヒルガオ科,マメ科,モクセイ科等多岐にわたる.

被害と生態:

日本では成虫・幼虫ともに春~晩秋まで見られる.蛹で越冬し,年1世代と考えられているが,休眠性はなく,飼育条件下では蛹は年内または冬季中に羽化する.成虫は寄主植物の古い葉に1卵ずつ産み,幼虫は単独で蚕食して成長し,老熟すると土中の浅い場所に蛹室を作り蛹化する.
個体数が少ないので日本では広域の農地で害虫化した事例はまだないが,有数の大型幼虫であるため,家庭菜園の主としてトマト,ナス,ピーマンなどのナス科作物では少数個体でもしばしば壊滅的な被害を受け,今後の動向が注目されている.また,2010年の秋には茨城県のタバコに対して,翌2011年夏には埼玉県でトマトとナスに対し,それぞれ本種の発生予察情報で特殊報が出された.こうした本種の北上について,「温暖化」の事例としてとらえる向きもあるようであるが,これらの近年の発生地で野外越冬はまだ確認されておらず,毎年長距離移動で飛来した成虫が発生源になっている可能性もある.
なお,本種を含むメンガタスズメ類の成虫は口吻は短く頑丈で,これでミツバチの巣を襲い巣盤に孔をあけて蜂蜜を摂取し,養蜂害虫として世界的に知られている.
(2012.12.22 梅谷献二)

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クロメンガタスズメ成虫(梅谷献二)

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クロメンガタスズメ老熟幼虫緑色型(梅谷献二)

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クロメンガタスズメ老熟幼虫黄色型(梅谷献二)

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クロメンガタスズメ幼虫(全農教)

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クロメンガタスズメ幼虫尾角(梅谷献二)

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クロメンガタスズメ卵(全農教)

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クロメンガタスズメ蛹(梅谷献二)